#9、純愛ラプソディ

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 当然、恥ずかしいし、悔しいという気持ちだってある。  けれどももうそんなものはどうだっていい。  窪塚がそうして欲しいと願うなら、どんなことだって叶えてあげたいって思うのだ。  だからって素直にはなかなか口にはできない。  窪塚だってわかっているはずだ。  だから敢えてそう仕向けているのかは知りようがないが。  初めて本気で好きになった窪塚には、なんだって伝えておきたいって思う。  これまでは、お互いに想いをひた隠しにしてきて、嘘で塗り固めてきたのだから余計だ。  これから少しずつ少しずつそういうことを積み重ねて、いつかお互いの両親のようになれたらいいなぁ。  そしていつか子供にも恵まれて、素敵な家族になっていけたら幸せだろうなぁ。  こんなこといったら大袈裟かもしれないけれど、その一歩を踏み出すような想いで、私は窪塚に向けて、声の限りに想いを紡ぎ出す。 「く、くぼ……づかッ。も……ダメぇ。窪塚……が、欲しい」  最初こそ、喉が張り付いて声が出ずらかったものの、なんとかちゃんと言い切ることができた。 「ーーッ!?」  窪塚からも、ハッと息を呑むような気配を感じることもでき。  その瞬間、私の目尻からは透明な雫が零れ落ちていた。  この涙は、性的なものでもないし、勿論悲しいからでもない。  安堵したからでもあっただろうし、嬉しかったからでもあったのだ。  それを素早い身のこなしで足下から移動してきた窪塚がいつのまにか唇でそうっとなぞるように優しく拭ってくれていて。 「鈴、泣かせてごめんな」  えらくシュンとした声音が届いた。  さっきまであんなに意地悪だったクセに、全然容赦なんてしてくれなかったクセに。  そうは思ったりもするけど、私の言動ひとつで、こんなにも右往左往してくれているのかと思うと。  ーー窪塚のことが愛おしくて愛おしくてどうしようもない。 「嬉しかっただけだってば。そんなことより、窪塚が欲しいの。今すぐ。ねえ、お願い」 「ああ。わかった。じゃーー」 「ヤダッ、待てない。今すぐ窪塚が欲しいの。お願い」  私のお強請りに驚きつつもすぐに応えようと当然のように避妊具の準備に取りかかろうとする窪塚を焦れた私は制してしまうのだった。  私の言葉を耳にした途端、窪塚は、ベッド脇のサイドチェストに手を伸ばしたまま固まってしまっている。  そんなに驚くことないと思うんだけど。  だって、別に避妊なんてしなくったって、妊娠の心配なんてないのだし。  それに、こういうことに疎い私でさえ、避妊しないままの方が気持ちいいらしいということは知ってる。  そのことに関して、少なからず興味だってある。 窪塚には、そういう好奇心とかはないのだろうか。  念のために言っておくが、いくら興味があるからって、他の人となんて考えられない。  窪塚とだからしてみたいって思うのだ。  窪塚に気持ちよくなってもらいたいっていう気持ちの方が大きい。  これまでもそうだけど、私はいつも受け身で、窪塚に気持ちよくしてもらっているばっかりで、何もしてあげられていない。  だから、そう思うのは当然だと思う。  頭に次々に浮上する様々な思考が渦巻くなか、私は窪塚に対して質問を投げかけるのだった。 「別に避妊する心配なんてないんだし、いいじゃない別に。どうしてダメなのよ?」
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