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その時に、完全になくしてしたと思っていたあの夜の記憶の断片を思い出していたようだ。
というより、記憶の断片を映像としてチラッとだけ垣間見たと言った方が正しいかもしれない。
✧✦✧
『鈴、好きだ。りんッ……りん』
つい今しがた、私が絶頂を迎える寸前と同じように、映像の中の窪塚は、一心不乱に激しい抽挿を繰り出していた。
そして熱に浮かされたように私の名前と愛を紡ぎ出している。
それに対して私は、窪塚の腕の中で背中に腕を回して、必死にしがみついていたようだ。
そんな私のことを余裕がないながらも、やっぱり窪塚は気遣わしげに、私の顔や身体に優しい甘やかな口づけを降らし続けていたようだった。
✧✦✧
窪塚がちゃんと好きだと言ってくれていたこともそうだが。
その時に、無数のキスの雨を降らせていたはずの痕跡が一つとして残っていなかったことにも驚いた。
おそらく、窪塚のことを嫌っていた私のことを気遣ってのことだったのだろう。
窪塚のことだから、私とこうして想いが通じ合っていなかったら、ずっとそのまま本当のことは話さずにいたかもしれない。
否、絶対にそうしていたに違いない。
そんなにも想っていてくれたんだと、嬉しい反面。
窪塚の心情を想うと、胸が締め付けられる心地がする。
なんとかすぐに意識を取り戻せたものの、あの夜の記憶の断片のせいで、また後悔の念に囚われそうになっていた。
そこに、窪塚のとても心配そうな声音が意識に割り込んできて。
「鈴……」
その声でようやく現実世界に引き戻されることになった。
声に導かれた私が目を向けると、声音同様に不安にくれる窪塚の端正な顔が視界に映し出された、その瞬間。
感極まってしまった私は窪塚の胸にぎゅっと抱きついてしまっていた。
そんな私のことを逞しい腕にふわりと包み込むようにして抱きしめてくれた窪塚は、まるで全部理解してくれているかように、黙って背中を擦ってくれている。
実際には、達した直後なので、身体を気遣ってくれているのだろう。
窪塚はいつもいつも私のことを優先してくれていた。
こうやってこれまでのことを想い返すたびに、窪塚の想いに気づかされる。
これからだってきっとそうに違いない。
そのたびに、窪塚のことをもっともっと好きになっていくんだろう。
私がそうであるように、窪塚にとってもそうでありたい。
だからもう絶対に後悔なんてしない。
あの夜があったお陰で、こうして窪塚と一緒にいられるのだから。
再び後悔の念に囚われそうだったけど、窪塚のお陰で、軌道修正することができた。
私は、もう前だけを見据えるために、今一度、一歩踏み出すつもりで声を紡いだ。
「もう、そんなに心配しなくても平気だってばッ。ほら、この通り。ね?」
「否、けど、俺、理性見失ってたし。本当に大丈夫なのか?」
ようやく想いが通じ合えた窪塚と身も心も固い絆で結ばれてーーこの幸せをまだまだ一緒に分かちあっていたい。
その想いに突き動かされて、お強請りを炸裂させれば……。
「多少は怠いけど、大丈夫だってば。そんなことより、まだまだ窪塚のこと傍で感じてたいの。だからお願い。ね?」
「そんな可愛いお強請りされたら、ヤバいだろ」
「ーーええッ!? うっそ。復活、早すぎない?」
「鈴が可愛いことばっか言ってくるからだろ。こんなにも俺のこと煽ったんだからさ、ちゃんと責任とってくれねーと」
「////……えっ、あっ……ひゃんッ!?」
私の想いが通じたのか、窪塚の分身が驚異的な復活を遂げてしまった。
同時に、窪塚もヤル気を漲らせているようだ。
どうやら恋から愛へと進化を遂げた私と窪塚の互いを想い合う気持ちには、途轍もないパワーを秘めているらしい。
そんな私と窪塚の甘やかなひと時は、まだまだはじまったばかりのようだ。
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