5人が本棚に入れています
本棚に追加
「君は怒ってる? 僕のせいであんなことになったの」
ユキミくんは突然僕に聞いてきた。
スイカの皮を軒下に並べて乾かしていると、彼は神妙な顔つきをしてそう呟く。
「怒ってなんかないよ。むしろ、ありがとう。
すごく楽しかった。今までみたいにずっと家に居てばっかりだったら、
僕はこんなことしてなかったと思う。だから、良かったと思う」
「そう」ユキミくんは僕をじっと見て、
「よかった」
そう言って笑った。
しとやかな笑顔。けれど僕はそこに、さっきのエツコさんの面影を、
あの物憂げな美貌を見て取って、ありもしない緊張を感じてしまった。
それっきり僕たちの会話は無かった。
足を拭き終わると、ユキミくんは「おやすみ」と二階に上がっていった。
それから、スイカの皮を捨てたり皿を洗ったりしていると、
酔ったヤスオさんと、それを抱えるエツコさんが帰ってきた。
僕は玄関に二人を迎えに行く。
「風呂はもう入ったのかい」
赤い顔のヤスオさんが僕に聞く。
「いや、まだです」
「そうかい、だったら先に入るといいよ」
「じゃあ、お先に失礼します」
うん、とヤスオさんは居間に戻っていく。
先に上がっていたエツコさんと、なにか言い合っている声が聞こえたけれど、
僕はもうヘトヘトになっていたから、さっさと脱衣所に向かっていった。
最初のコメントを投稿しよう!