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「ほら、ブレーキ握って」
「ブレーキって、さっき言ってたこれ?」
「そうそう」
キュイィと、タイヤとブレーキが擦れ合う音が響いて、
僕たち二人を乗せた自転車はぎこちなく止まる。
僕の脚は簡易的に補助輪代わりとなっているから、
けっこう負担は大きくて、もしかしたら折れてるかもと心配になる。
「なんだかいけそうな気がする」
小一時間のレッスンで、彼は相当自信を付けたみたいだが、
僕からすれば、まだ彼のテクニックには多く不安が残っている。
それでも彼は譲らない。
このままどこまでも行ってしまおうなんていうふうに、
スタンドが立った空回りするペダルを延々と漕いでいる。
内気だと思っていた彼だけれど、案外、ノリがいい。
「でももうちょっと練習しよ――」
ガタン。
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