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「そう言えば聞いたわよー?」
俺の宿題を見ていた姉さんが急にニヤついた顔で切り出して来た。
「ええ、なにをだよ……」
姉さんと言っても実の姉ってわけじゃあない。たまたま隣に住んでるみっつ年上のお姉さんだ。ただ生まれたときから当然のようにうちに出入りしているので、ひとりっ子の俺にとってまさに姉さんとしか言いようがない。
姉さんは大学三年生、俺は高校三年に上がって受験ということもあり、どうせ毎日のように入り浸っているのだからとうちの親からバイト料を貰って俺の勉強を見てくれている。
姉さんは眼鏡のブリッジを人差し指で押し上げながらにたあといやらしい笑みを浮かべた。
「母さん」
「ぐはあっ!?」
心臓を抉られるかのような衝撃を受けて仰け反る俺。演技やノリなんてチャチなモンじゃない。腹の底から苦悶の呻きが漏れて出る。
「いやあ、高校三年生にもなってやってしまいましたなあ。でゅふっでゅふふっ」
くっそーマジでどこから嗅ぎ付けて来たんだ。いやらしい笑い方しやがって。
「は、花の女子大生がでゅふでゅふ笑うなよ彼氏出来ないぞ」
「心配しなくたって毎日男子高校生の部屋に上がり込んでる女子大生に彼氏なんか出来ないわよ」
「上がり込んでるって、バイトじゃん……」
「ま、そーですけどお?」
苦し紛れのカウンター攻撃は空振りだったようだ。敵は手ごわい。
「それで、そんなお母さんに似てるひとだったの?」
「この話終わんないの?」
「おわりまてーん」
んなこと言ってたら俺が問題解けねーじゃん。
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