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「花枝ー。聞いたぞ。慎太のことが好きなんだってなー」
同じクラスの男子が私のところへ来てクラス中に聞こえるような大声で言う。私は恥ずかしくて顔が熱くなった。
「あー、赤くなってる、本当なんだ。花枝って分かりやすいな」
男子はそう言って笑っている。慎太くんが居なくてよかった。今はお昼休みで学食に行っている子が多い。女子はあまり学食に行かないで学校に来るパン屋さんで買っている。だから今の男子の声は男子の三割と女子みんなが聴いた。逃げ出したい気分だ。でも私が慎太くんのことが好きだなんて誰が伝えたんだろう。
私は森野花枝、十七歳だ。身長百六十二センチで四十八キロ。顔で自信があるのは細くて高い鼻だけだが、目はいちおう奥二重だ。
この高校は共学で男女の比率は男子の方が多い。一クラス三十人で女子は十人だけだ。席の配置はくじ引きなので男女関係ない。私は運悪く男子に囲まれた。席は真ん中だが消しゴムを忘れたときなど借りられないので親友の葵に欠いて分けて貰ったことがある。
「やめてよ。誰がそんなこと言ったの?」
「それは言えない。慎太、好きな子いないぞ。告白したらどうだ?」
私はあまりの不躾さに頭に来て席を立った。教室を出ると階段を降りる。まだお昼休みは十五分ある。新鮮な空気で落ち着こう。今は五月なので外が気持ちいい。
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