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三日後、藤棚の絵がほとんど完成した。画板を持って美術室に戻る。顧問が頬を緩ませた。
「なかなかよく描けたじゃないか」
「そうですか?賞がもらえたらいいなー」
私は美術室に絵を置いて帰路に就いた。家に帰るとお母さんがお風呂の掃除をしていた。私は「手伝うよ」と言って代わってあげた。
掃除が終わるとキッチンへ行ってぶどうジュースを飲む。お母さんにパジャマパーティーの日は何も作らなくていいからね、と言っておいたのだが、お母さんは気を利かす。
「餃子でも作ろうか?あれなら少なく作るのも多く作るのも同じ、嫌いな子、いないでしょ」
「餃子は好き、でも一人八個くらい食べるんじゃない?焼くのも大変だよ」
「大事な花枝の友達のためだもの」
私はお母さんに抱き着いた。
次の日、部室に行くと絵が盗まれていた。置いていたはずの場所にない。美術室を隅から隅まで探した。美術室は鍵が掛かってないので誰でも入れる。私は気落ちした。いったい誰が持ち去ったのだろう。
「悔しいね」
葵が言う。私は泣きそうになる。一生懸命描いたのに……。でもまた描けばいいんだ。今度は薔薇を描こう。コンクールは終わっちゃうけど。黄色い薔薇が好きだし、来年のコンクールに出してもいい。
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