EAST MIDDLE

9/11
前へ
/112ページ
次へ
「そんな・・」 燃え盛る「マメ吉さんEX」を眺め、アクエリアスが言葉を漏らす。 炎は一層勢いを増していたが、大きさを取り戻した「布」が、おそらくはスートの差金で覆いかぶさると、すっかり鎮火した。 「『発火の杖』は出来たら使いたくなかったけど、仕方がないよね」 スートは少し寂しそうな顔で「布」に近づいていった。 ゲーム開始前にオープンしたカードにより、スートが生成した「杖」は、二本あった。 その一つは、『疑似の杖』。 そしてもう一つは、『発火の杖』。 触れることで発火する『発火の杖』を、『疑似の杖』で「金貨」の見た目に変化させ、「マメ吉さんEX」に弾いたわけだ。 「運命は反転した。本人が気付かぬ内に、本人の意識の外で、本人の手によってね」 「布」に優しく触れるスートの発言に合わせて、アクエリアスは視界の隅に変化を捉えた。 それというのは、逆さまにした「聖杯」の下。 真上に「聖杯」の口があるその場所に、地を転がって到達していた一枚の「金貨」が、その形を変えたのだ。 明らかになったそのモノの正体は、小瓶。 弐ノ国にて、スートが弟のハツから奪っておいた、何の変哲もないただの小瓶であった。 ハツは、兄のスートに一杯食わせようと空の小瓶を奪わせたわけだが、現在の小瓶にはが入っていた。 その液体とは、「聖杯」の液体。 スートが追加した『ルール』により、スートの「聖杯」に注がれた液体は、時間経過と共にアクエリアスの「聖杯」に移っていく。 それでいて、現在のスートの「聖杯」は空で、アクエリアスの「聖杯」は満タンなのに、小瓶にも液体が入っている。 この状況は一体どういうことか。 その答えは、スートとアクエリアスで配られた「聖杯」の大きさが違うから、であった。 スートの「聖杯」は、アクエリアスの「聖杯」より一回り大きい。 つまり、液体の移動が完了すれば、アクエリアスの「聖杯」は必ず溢れる仕様となっていたのだ。 スートは、この差分を小瓶に移し、切り札として保有していた。 そして今、「金貨」から小瓶に戻ったことで、その中身は、本来の重力とは逆の向きで「聖杯」に注がれる。 アクエリアスの「聖杯」から、空に向かって液体が溢れた。 「弱点、みっけ」 指で丸をつくり、そこから覗くスート。 その先のアクエリアス。体の一部が赤く光る。 「脚に『マイマイン』か。どうやら僕の予想は逆だったみたいだね」 『ルール』によって晒されたアクエリアスの弱点。 その位置は、スートが「ユアマイン」の位置だと予想した、脚であった。 右脚の付け根部分で、赤く光る弱点。 スートは「金貨」を片手に持つと、弱点が晒されたのとは逆の左脚めがけて放った。 「・・っ!」 アクエリアスは「金貨」を避けるために片足立ちに。 「チェックメイトだね」 その隙に一気に距離を詰めたスートが、晒された弱点へと蹴りを打ち込む動作をする。 「「・・」」 この刹那。両者は共に勝利を確信した。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加