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「そんな・・」
燃え盛る「マメ吉さんEX」を眺め、アクエリアスが言葉を漏らす。
炎は一層勢いを増していたが、大きさを取り戻した「布」が、おそらくはスートの差金で覆いかぶさると、すっかり鎮火した。
「『発火の杖』は出来たら使いたくなかったけど、仕方がないよね」
スートは少し寂しそうな顔で「布」に近づいていった。
ゲーム開始前にオープンしたカードにより、スートが生成した「杖」は、二本あった。
その一つは、『疑似の杖』。
そしてもう一つは、『発火の杖』。
触れることで発火する『発火の杖』を、『疑似の杖』で「金貨」の見た目に変化させ、「マメ吉さんEX」に弾いたわけだ。
「運命は反転した。本人が気付かぬ内に、本人の意識の外で、本人の手によってね」
「布」に優しく触れるスートの発言に合わせて、アクエリアスは視界の隅に変化を捉えた。
それというのは、逆さまにした「聖杯」の下。
真上に「聖杯」の口があるその場所に、地を転がって到達していた一枚の「金貨」が、その形を変えたのだ。
明らかになったそのモノの正体は、小瓶。
弐ノ国にて、スートが弟のハツから奪っておいた、何の変哲もないただの小瓶であった。
ハツは、兄のスートに一杯食わせようと空の小瓶を奪わせたわけだが、現在の小瓶には液体が入っていた。
その液体とは、「聖杯」の液体。
スートが追加した『ルール』により、スートの「聖杯」に注がれた液体は、時間経過と共にアクエリアスの「聖杯」に移っていく。
それでいて、現在のスートの「聖杯」は空で、アクエリアスの「聖杯」は満タンなのに、小瓶にも液体が入っている。
この状況は一体どういうことか。
その答えは、スートとアクエリアスで配られた「聖杯」の大きさが違うから、であった。
スートの「聖杯」は、アクエリアスの「聖杯」より一回り大きい。
つまり、液体の移動が完了すれば、アクエリアスの「聖杯」は必ず溢れる仕様となっていたのだ。
スートは、この差分を小瓶に移し、切り札として保有していた。
そして今、「金貨」から小瓶に戻ったことで、その中身は、本来の重力とは逆の向きで「聖杯」に注がれる。
アクエリアスの「聖杯」から、空に向かって液体が溢れた。
「弱点、みっけ」
指で丸をつくり、そこから覗くスート。
その先のアクエリアス。体の一部が赤く光る。
「脚に『マイマイン』か。どうやら僕の予想は逆だったみたいだね」
『ルール』によって晒されたアクエリアスの弱点。
その位置は、スートが「ユアマイン」の位置だと予想した、脚であった。
右脚の付け根部分で、赤く光る弱点。
スートは「金貨」を片手に持つと、弱点が晒されたのとは逆の左脚めがけて放った。
「・・っ!」
アクエリアスは「金貨」を避けるために片足立ちに。
「チェックメイトだね」
その隙に一気に距離を詰めたスートが、晒された弱点へと蹴りを打ち込む動作をする。
「「・・」」
この刹那。両者は共に勝利を確信した。
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