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「『曖昧Meマイン』。これが今回のゲームの名前です」
開いた「本」に視線を落とし、表紙と裏表紙をスートに見せるような形で、アクエリアスが言葉を紡いでいく。
「この本は『ルールブック』。ココに書いたルールを一定の範囲に反映させることができます。ただし、ルールは公平でなくてはいけません。今回のゲーム『曖昧Meマイン』のルールもここに明記されており、私が読み上げることで反映されます。仮にもゲームの国の王として、嘘をつくような真似は決してしませんので、どうか安心してください」
「わかった。信じるよ」
アクエリアスの言葉に、スートは薄い笑みを浮かべた。
「『曖昧Meマイン』のルールは至ってシンプル。ゲーム開始前に、プレイヤーには二種類の『マイン』が配られます。その概要は、相手が爆発する地雷と自分が爆発する地雷。衝撃が加わると、対象者が爆発する仕掛けです。衝撃は相手からのモノに限り、自分で起爆するような真似はできません。今回だとプレイヤーが二人なので、『マイン』は一人二つです。この二つの『マイン』を自分の体の何処かに設置して、ゲーム開始となります」
「なるほど。相手と自分、それぞれの弱点を持った状態で闘うわけだね」
「その通りです。爆発の威力はどうしますか?」
「もちろん最大で」
スートは間髪入れずに答えた。
「いいのですか?最大威力を食らえば、まず助かりませんよ」
「それがいいんじゃないか。最大の緊張は、最大の快楽を生むモノだ」
スートは恍惚とした表情で告げた。
「わかりました。それでは早速、設置してください」
アクエリアスの言葉を合図に、二人の眼前に二つの球体がそれぞれ出現した。
赤と青。共に掌サイズのモノだ。
「赤い方が自分の地雷。青い方が相手の地雷です。そうですね、それぞれ『マイマイン』『ユアマイン』と呼ぶことにしましょうか。『マイン』は頭の中で思い浮かべた箇所にそれぞれ設置されます。設置後は不可視状態となり、後から位置を変更することはできません。相手の設置場所は把握不可能ですので安心してどうぞ」
「りょーかい」
程なくして、両者共に『マイン』が視えなくなった。
「それからもう一つ。相手の『ユアマイン』を取り除く方法ですが───」
「ストップ」
アクエリアスの説明を、またしてもスートが遮る。
「その説明を聞かない代わりに、一つ僕から『ルール』を追加するというのはどうかな?」
「・・聞きましょう」
「話が早くて助かるよ。どうも相手が配ったカードだけで勝負するのは嫌でね」
いやらしい笑みを見せると、スートは例の数十枚の「カード」を、もう一度裏向きで展開した。
それから滑らかな手つきで、3枚のカードをオープンする。
「『ワンド』に『カップ』に『ペンタクル』か・・・」
3枚のカードには、それぞれ「杖」「聖杯」「金貨」の絵柄が描かれていた。
「それじゃあ、コレにしよう」
その内の「聖杯」のカードを手に取る。
「『カップ』は、水のエレメント。ゲーム開始と同時に王様には空の聖杯が、僕には液体がなみなみに注がれた聖杯がそれぞれ配られる。ゲームの経過と共に、僕の聖杯に注がれた液体は段々と王様の聖杯に移っていく。聖杯から液体が溢れると、その聖杯の持ち主が抱える弱点の位置が晒される。これでどうかな?」
「・・ええ、いいでしょう」
少し考える素振りを見せた後、アクエリアスはスートの提案を受け入れた。
「ただし、液体の移動速度は、『ルールブック』が適切なモノを算出し、適応します」
「うん。いいよ」
アクエリアスが、新しいルールを『ルールブック』に書き込んでいく。
「それでは始めましょうか」
「いつでもいーよ」
スートが首を鳴らし、アクエリアスが「本」を閉じる。
程なくして、二人の眼前にそれぞれ「聖杯」が配られた。二人はソレを左手の掌に乗せる。
『ルールブック』のルールが適応された。
それすなわち、ゲーム開始の合図だ。
「っ!?」
その直後。アクエリアスの顔面めがけて、ナニカが飛来した。
「うーん。やっぱりハズレか・・」
素早く避けたアクエリアスを眺め、スートはニヤリと笑った。
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