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「貴方が説明を省いた、『曖昧Meマイン』もう一つのルール。それがこの『マメ吉さん』です」
アクエリアスの掌に乗る「鳩」が、ちょこんと飛んで着地する。
人の言葉を理解しているのか、「オニハソト、フクハウチ」と、首を前後に揺らしながら、謎の言葉を繰り返している。
ちょこちょこと移動する「鳩」。「マメ吉さん」のつぶらな丸目が、スートを捉えた。
「オニハソト」
「なんだ!?」
「マメ吉さん」の口が開いたかと思うと、そこから「ナニカ」が吐き出された。
それは中々のスピードで、スートは慌てて避ける。
弾丸のように飛ばされた「ナニカ」は、屋上を包むように存在する見えざる壁、「サイゲン」にぶつかった。
「これは・・」
その様子を観察し、スートが呟く。
「『マメ吉さん』の攻撃は、『マイマイン』に当たると起爆し、『ユアマイン』に当たると除去します。つまりは、ノーリスクで攻撃を仕掛けることが出来るわけです」
その間、アクエリアスは「マメ吉さん」の説明を始めた。
「本来は貴方にも配られる筈の切り札ですが、断られた為、二羽とも私が使わせてもらいます」
彼女の右手に、もう一羽「マメ吉さん」が現れた。
「オニハソト」「フクハウチ」
二羽の「マメ吉さん」は、スートに標準を合わせた。
「いいだろう。受けて立つよ」
スートも「金貨」を弾いて応戦する。
「王様には当たらないように注意しないとね」
雑に弾いては、アクエリアスが「ユアマイン」の起爆に利用することが考えられるため、細心の注意を払って「マメ吉さん」だけに狙いをすます。
「マメ吉さん」は、向かってくる「金貨」に向かって「ナニカ」を吐き出し、空中で捉えた。
「ふーん。ロボットみたいに正確だね」
地に伏した「金貨」を眺め、後ろで手を組んだスートが呟く。
「金貨」は、ベタついた「ナニカ」によって、地面に張り付いている。
「金貨」も「ナニカ」もサイズは共に小さく、「マメ吉さん」の射的精度がロボット並みであることがよく分かる。
いや、もしくはそれ以外の存在か。
『曖昧Meマイン』というゲームを構成するためだけの存在ということなら、「マメ吉さん」はbotといったところか。
注意してみると、動きがやけに規則的だ。
「そういうことなら──」
スートは左手の「カップ」を垂直に上に投げると、空いた両手で器用に「金貨」を弾いた。
二枚の「金貨」が向かう先、そこには二羽の「マメ吉さん」が。
「オニハソト」「オニハソト」
先ほどと同様の攻撃に、「ナニカ」を吐き出すことで対処しようとする。
が、ぶつかる前に「金貨」は形を変え、「ナニカ」はするりとすり抜けた。
標的に当たらなかったことで、「マメ吉さん」達がもう一度発射しようと準備を始める。
それが整う少し前に、「金貨」から形を変えたモノは、「マメ吉さん」に到達した。
そのモノの形状は「輪」。その「輪」が、「マメ吉さん」のクチバシをすっぽりと収める。
僅差で「マメ吉さん」が「ナニカ」を発射。クチバシが塞がれていたことで、「ナニカ」は口内に留まった。
「ッ!・・」「ッ!・・」
程なくして「マメ吉さん」達が苦しみだす。
「カップ」をキャッチして、スートはニヤリと笑った。
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