7人が本棚に入れています
本棚に追加
アクエリアスが晒した弱点。それは「ユアマイン」であった。
スートは新たな『ルール』として、「聖杯」から液体が溢れると、その「聖杯」の持ち主が抱える弱点の位置が晒される、と提示した。
ここで重要なのは、弱点が具体的にナニを示すのかは明記されていないこと。
つまり、アクエリアスによって晒す弱点を操作することができたわけだ。
自分の命を司る「マイマイン」が弱点となることは間違いないが、相手に位置を悟られては不利になるという点で、「ユアマイン」もある意味で弱点だといる。強みと弱みは表裏一体という話だ。
脚部に「ユアマイン」があるというスートの予想は、見事的中していたことになる。
一方のスートは、蹴りを打ち込む動作の中で、アクエリアスの思惑の全てに思い至っていた。
スートは、アクエリアスが弱点として「ユアマイン」を晒すことを、最初から予測していた。
そこまで計算した上での、「聖杯」のルール提案であったのだ。
それはあくまで可能性の一つであったが、今回の攻撃に対するアクエリアスの反応で、スートは確信を持った。
仮に弱点が「マイマイン」だった場合、それが晒された時点で、その一点に100パーセントの警戒を向ける筈だ。
にも関わらず、こうしてスートは比較的容易に弱点に辿り着いている。
相手が全くの素人なれば話は分かるが、アクエリアスは仮にもゲームの国の王を名乗る存在。スートの正確な牽制があったにせよ、「マイマイン」に到達することは本来不可能に近い筈。
となれば、導き出される答えは、アクエリアスが「ユアマイン」を弱点として晒している、という事実である。
「「・・」」
スートは弱点に当たる寸前で蹴りを止めると、赤く光るその箇所に一枚のカードを投げ、大きく身を引いた。
「一体なんの真似です」
そのカード。『月』の絵柄が描かれたカードに視線を落とし、アクエリアスが疑問の声を漏らす。
「存在の証明は、観測者が存在して初めてなされる。それがこの世界の『ルール』だ」
スートの言葉を合図に、「マメ吉さんEX」を隠すように存在していた「布」が消滅。
そこに「マメ吉さんEX」の姿はなく、代わりに在ったのは大量の「鳩」であった。
「なんです!?」
大量の「鳩」は一斉に飛び立ち、アクエリアスを襲った。
視界を覆うほどの大量の「鳩」に、アクエリアスがすっかり目を回していると、その内の一匹が肩にぶつかり、姿を変えた。
「これは・・」
ソレはまたしてもカードであった。
肩に張り付いたそのカードの絵柄は『太陽』。脚に張り付いたままの『月』のカードと何か関係があるのだろうか、とアクエリアスが思考を巡らせていると───。
「太陽に照らされて初めて、僕たちは月を認識できる」
スートが意味深な言葉を吐き、大量の「鳩」がアクエリアスの元を離れるように一斉に飛び立つ。
その歪な変化に、アクエリアスの背中に寒気が走ったかと思うと、次いで燃えるような熱さが襲った。
それは一瞬の衝撃。
アクエリアスの意識は、瞬間的に飛んだ。
最初のコメントを投稿しよう!