《孤独》

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《孤独》

《孤独》 全世界にウイルスが蔓延していた… そのウイルスの感染力は激しい… しかし、人間の細胞によって症状はさまざまで… 免疫がある人間はそのウイルスを受け入れていることさえ… わかっていなかった。 その様な世界となり俺は… 誰かが何処かでどんな形でも生きて行く事を俺に指示していて… こんな世界を生き抜くため… 特効薬によりウイルスが完全に死滅するまで外部との接触を一切断ち切ることにした。 一切断ち切るとは外部の空気も体内に入れない事に決め… 俺は地下に住むことにした。 地下は高精度空気浄化フィルターを装備したシェルターで… そこに電気を供給し食糧、衣服ありとあらゆる物を用意して暮らす事にした。 そんなある日、突然電気が切れ真っ暗になった。 「停電かなあ?」 俺は暗闇の中、懐中電灯を探した… 「ああ…非常灯を常備してなかったなぁ….」 そんな独り言を呟きながら暗闇の中… 懐中電灯を探していた… すると 暗闇の中、目が慣れ始め… 目の前の状況がわかるようになっていた。 その時、微かであるがテレビ画面に何かが映し出された… その情景は… 思い出したく無いニュースであった。 それは5年前… 「いってらっしゃい…」 「気を付けてなぁ」 「あなた一人で大丈夫?」 「なんとかなるよ…」 「どうしても、この仕事のプレゼン資料仕上げないと…」 「パパも一緒に行こうよ…」 「ごめん、あゆみ…」 「お前、義理父、義理母に宜しく言ってくれ…」 「わかったわ…」 「ああ、そうそう、あなた、夕食は冷蔵庫の中にあるからレンジでチンしてね….」 「ご飯はジャーに入っているから…」 「うん…」 「それじゃ行ってくるね…」 俺には妻と10歳の娘あゆみがいた… 妻と娘は妻の実家に里帰りを… この会話が妻と娘の最後の別れとなった… あの痛ましい出来事… それは考えられ無い事故との遭遇であった… 警察からの報告では… 妻と娘がたまたま立ち寄ったコンビニで… 高齢者によるブレーキとアクセルの踏み間違えから… コンビニに入店する直前二人を襲った事故であり… 妻と娘は即死だった。 「え…」 暗闇の中…テレビ画面に映し出された情景は… あの時の思い出したく無いニュースの報道だった。 俺は妻と娘を亡くし事故後この世を去ろうと考えていた… それは俺の人生は妻とあゆみと暮らす生活以外、考えられなかったからだ。 俺は孤独に耐えられないと… しかし、人生の目的も希望も持てないまま5年の時が流れた… 孤独である俺は妻と娘を思いながら社会との接点を持たず暮らしていた。 そんな事を考えていると… テレビ画面に微笑む妻と娘が映し出され… 俺に… 「あなた生きて私達の分も…」 その言葉を最後に画面が真っ暗になり… 部屋は暗闇の中に… 俺は何故か涙を流していた… この孤独と向き合い過ぎ去った5年… 俺はこれから… 亡き妻の言葉を思いながら… 暗闇の中… 懐中電灯を探していた。 「あった….」 俺は懐中電灯を着け… 停電を確認するため地下シェルターの階段を上がり地上に出た。 すると眩ゆい光が俺を照らした。 「いい天気だ…」 俺は久しぶりに外に出たので時間感覚が薄らいでいた。 「おや?」 「変だぞ…」 俺は何故外に出たのか? そんな事も忘れていた。 「あれ人の声が聞こえない?」 独り言を呟いた。 すると強烈な臭いが鼻口に入り込み俺は嘔吐していた。 「おいおいなんだこの臭いは?」 周りを良く見ると無数のハエが飛び交っていた。 ハエは塊となり何かに覆い被さっていた。 その強烈な臭いは隣の飼い犬の腐敗臭だった。 俺は嫌な胸騒ぎが収まらず… あてもなく歩いていると腐敗臭が歩けば歩くほど強烈になっていった。 辿り着いたのは駅近くの商店街… そこには無数の人間が倒れ込み… 死んでいた。 その時俺は気付いた… 「ウイルスで…」 「生き残ったのは俺だけなのか?」 俺は独り言を呟き… 辺りを見渡した。 まったく生気が感じられない… すると俺の脳裏に妻の声が… 「あなた生きて私達の分も…」 《誰かが何処かでどんな形でも生きて行く事を俺に指示していたのは…》 妻だったのだと… 俺は「あなた生きて私達の分も…」の声に奮起し… これから本当の孤独が始まると覚悟を決めた… 終わり
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