感じる探偵 エピソード1 レインコートを着た死体

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 犯人が雨の日を選んだのはたまたまなのか?それとも意図があってのことなのかわからない。だが、犯人は柳町さんを自然死に見せかけて殺すことができた。  ボールを回収できなかったのは、犯人が単にボールの行方を見失ったか、一刻も早く現場から立ち去りたかったからだろう。  犯人は柳町さんが左脇に抱えた何かを奪い、逃走した。  私は鏡に映る自分を見て、確信を得た笑みを浮かべた。      十一月七日 土曜日  ニュース速報で、コロナ患者の重傷者数が五百人を超えた。街には雇止めや契約打ち切りで失業者が増え、持続化給付金の不正受給の犯人が捕まった。  そんな不穏な世の中の空気に、街を歩いている人々の顔はどこか、曇りがちだった。  私は本山さんを訪ねた。もちろん、今回の訪問は職務ではないので、下手をしたら門前払いをされるかもしれない。  私は婦人が言った、柳町さんの本来の役割について考えていた。彼が表舞台に出なかった理由は何か?それが先月起きた事件の解明の糸口になると思った。  本山さんは上半身裸のまま、戸口に現れた。首には薄汚れたタオルをかけている。  私を見るなり、本山さんは口の端を歪めた。 「あんたか」  やはり、私は歓迎されなかった。私は今日は職務で来たわけではないと明言した。 「なんだ?俺はあんたみたいなインテリとは友達になれないが...」 「あの、柳町さんのことについて、詳しく話を聞かせてもらえませんか?」 「ほう。もしかして、あんた、柳町さんは誰かに殺されたと考えているようだね」  本山さんは龍の刺青が入った背中を向け、奥の部屋に引っ込んだ。私はあがってもいいと判断して、上がり框で靴を脱いだ。  換気が十分ではないためか「本当はだめ」、奥の部屋は埃っぽく、独居男性特有の饐えた匂いが漂っていた。部屋の床の間には日本刀らしきものが立てかけられていた。真剣ではなく、模造刀だと思いたい。
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