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第二章 異世界上等!成り上がって見せるぜ!
人は何のために生まれ生きるのか。
目を開けた。体はまだ大丈夫だ。
生きようと思えば、体は劇的に回復するといわれた。
本当にそうなった。
右のつぶれた乳房が背中と張り付いているが、もうそんなの気にならなかった。
それは、こんな訳の分からないところに来ても笑顔でいてくれる人たちに囲まれていたからかもしれない。
「ジェシカ、乗せてくれる?」
その生き物が低くなり、私が跨がれるまで待ってくれた。
「ジェシカ、アップ!」
バサッ、バサッと羽を大きく広げ空へと私を連れて行ってくれる。
「モールまで連れて行って!」
キュゥ―イ!と一声泣くと、びゅっと風を切るように飛び始めた。
気持ちいい。
私もここで生きようと決めたのは今から一年前のことだ。
2019年七月十五日
この日私は母親と、車で買い物に来ていた。
イオンモールで食事をして買い物をしようと下りエスカレーターに乗り込んだ。
止めどもない話。
母親との話はいつもの変わりのない物だった。
ガガガ
何の音と上を見上げた瞬間。
ゴゴゴゴゴゴ
という音に、バンとすべての電気が消えた。
キャー!
ギャー!
と何十人もの人の声と同時に体ががくんと前後に揺れた。背中をドンと押された次の瞬間、前の人に乗りかかった。
落ちる!
前の人の髪の匂い、体の感触、腕でそれをかばったような気がした。
記憶はそこで途切れた。
目が覚めゆっくりとこの世界の事を聞き始めたとき、私はこの世界で生きるしかないのだと悟った。
母の最期。
つぶれた片方の胸の痛みとともに。
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