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朝乃叔母さんは、お母さんより五つ年上のお姉さんだ。結婚はしていない。本人いわく“結婚して他人のために時間使うとか、あたしには絶対無理なのよね!”とのこと。実際彼女は、営業マンとしてバリバリに日本全国を飛び回るキャリアウーマンである。恋よりも仕事、そして自分の自由な人生。それを体現するような彼女の生き方は、同じ女性として私も少し憧れているものもあった。勿論お母さんのことは大好きだし、とても仲の良い家族は誇らしいので、自分もいつかそうやって温かい家庭を築きたいという気持ちもないわけではないのだが。
元気いっぱいで、幼い頃からお転婆だったという朝の叔母さんと、お淑やかで上品なタイプのお母さん。誰がどう見ても真逆なタイプなのに、姉妹仲は非常に良いのだから世の中わからないものである。
「そっか。叔母さん今、東京来てるんだ」
「そ。多分十日くらいはこっちいることになりそう。プロジェクトのプレゼンもあるし大きな会議もあるし商談もあるし、でいくつも用事まとめてこなそうとしてるのよね。いやー、人気者って辛いわ!」
「いいなあ」
大変な仕事をしているはずなのに、彼女の顔からはまったく疲れらしい疲れが見えない。
近くのカフェに入って、今は紅茶とケーキを奢って貰っている最中である。たまには王道のショートケーキもいいものだ。ちなみに、上に乗っかっているイチゴは最後に食べる派の私である。
「それで、ゆっちゃんは何悩んでたわけ?」
にやり、と笑って叔母さんは言った。
「ふふふ、当ててあげようか。ズバリ、母の日のプレゼントに悩んでた!でしょー?」
「叔母さんには何でもお見通しなんだねえ」
「まーね!伊達にあんたとお母さんをながーく草葉の陰から見守ってきたわけじゃないからねえ!」
草場の陰ってそういう意味だっけ?と私はちらっと思ったがスルーすることにした。彼女がどこか間違ったことわざや格言の類を使うのは今に始まったことではない。
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