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「今年こそは、母の日にちゃんとしたもの贈りたいんだよね。折り紙とか、手作りの物でもお母さんは喜んでくれるんだけど……私ももう小学五年生だし」
紅茶にシロップを入れて甘くしながら、そう告げる私。
「だからケーキにしようかなーって思ってたんだけど……お母さん甘いもの好きだし。でもケーキって、ホールケーキだとそこそこ高いんだよね。お金ためたけど、予算そんなにあるわけじゃないし……来月は結婚記念日もあるから、そのお金も取っておきたいし。それに、ケーキってサプライズには向いてなくて」
「あー、確かに。美味しいけど、予定外で買ってこられると当日に食べられなかったりもするかもね。雅乃、小食だし」
「そうなのー」
雅乃、というのがお母さんの名前である。子供の頃から仲良しと豪語するだけあって、朝乃叔母さんはお母さんのことなら何でもよく知っているのだ。
「……んー、じゃあ、食べ物じゃない方がいいかもね。サプライズにしたいなら」
いいこと思いついた!というように彼女は指を立てた。
「お花贈るのはどう?雅乃、お花も大好きだったはずよ。オーソドックスだけど、喜ぶんじゃないかしらね!」
「お花かー……カーネーション?やっぱり」
「カーネーションでもいいけど、好きなお花を贈るのもいいと思うわ。お花にはせっかく花言葉ってものがあるんだもの。良い花言葉のお花を、メッセージってことで贈るのも全然いいと思うのよね。小さい花束でいいなら、千円くらいでもいいの売ってるわよ。それくらいならお金出せるんじゃない?」
「確かに!……あ」
そこで、私はピンと来た。叔母さんが何の営業をしているのか思い出したのだ。
彼女は、いろんな企業の広告の仕事をしている。正確にはデザインをする人ではなく、いろんなところの広告の仕事を取ってくる営業が中心なわけだが――。
「ひょっとして、今どっかのお花屋さんとお仕事してたりする?」
「あら?バレちゃった?」
なんとも商魂逞しい。私は思わず吹き出してしまった。
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