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「せっかくだからいろいろお話したいところだけど、俺たちこれからやることがあるんで、またあとで」
陸くんが爽やかな笑顔でそう言うと、親子は部屋のあるほうへ進んでいった。
大家さんと一緒に二人を見送った私は、二人が見えなくなったのを確認して、大家さんに話しかけた。
「しっかりした子ですね」
「えぇ。いつも元気で、とてもいい子です。静子さんとも仲が良くて、見ていてホッとします」
「あの二人も、私の歓迎会の準備をしてくれるんでしょうか」
「今さら隠してもしょうがないですよね。今日は佐伯親子が料理をしてくれるんです。静子さんの料理は絶品ですから、ぜひ期待してください」
大家さんは住民の方の話をするとき、とても嬉しそうに笑う。
ここに来てまだ数時間しか経っていないけれど、大家さんと住民のみなさんが良好な人間関係を築いているということがよくわかった。
私もこの輪の中に入れるのかな。
そんな心配とともに私が黙っていると、すぐに大家さんから声がかかった。
「佐伯親子が帰ってきたので、これで残りはあと一人です。全員揃って準備ができたら声をかけますので、莉亜さんはそれまで、どうぞゆっくりしててください」
大家さんが笑顔でそんなふうに言うものだから、私はお言葉に甘えて自分の部屋に戻ることにした。
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