第1話 ようこそ「勿忘荘」へ

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 大家さんの表情からは、さっきまでの心配そうな様子は完全に消えていて、これから始まるイベントが楽しみでしょうがないという顔になっていた。  その顔とさっきの「なんでもない」がちょっと怪しい気がして、どのような迎え方をされるのか少しだけ怖くなったけど、それよりも楽しみのほうが大きかったと思う。  だから私は、特に何も考えずに自然に振る舞おうと心に決めた。  みなさんの歓迎を、そのまんま受け止めよう。  誰かが私を待っててくれる。  それだけでも十分ありがたいことなんだから。 「じゃあ、莉亜さんから入ってください」 「え? 大家さんはどうするんですか」 「もちろん後ろからついていきますよ。ささっ、入った入った」  気持ち的にも物理的にも背中を押された私は、なけなしの勇気を振り絞ってドアを開けた。  ノックをしたほうがよかったかと一瞬で反省がよぎったけれど、もう後戻りはできない。  扉を開くと、リビングの食卓にみんなが座っていた。  ただ、その様子は明らかに普通の食事中という感じで、盛り上がっているわけでも静かというわけでもなかった。  歓迎会と聞いて私が真っ先に思い浮かべたのは、ドアを開けたらクラッカーか何かが鳴って、みんなで拍手してくれるものを想像したけれど、まったくそんなんじゃなかった。
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