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墓地を出て、私はホッとする。
お母さんとお父さんとおばちゃんは、今頃何してるかな、と考える。
今日は、やっちゃんのお父さんがいなくなった日。
1年前の今日、やっちゃんのお父さんは飛行機に乗っていて、そのまま飛行機ごといなくなってしまった。
お仕事が忙しくて、お休みの日もいないことが多かったけど、たまにいると、暗くなるまで、やっちゃんとサッカーをしていた。
私もたくさん遊んでもらった。
ドッチボールや、氷鬼、近所の山の中にあるターザンロープや、ネット。
やっちゃんのお父さんは、本気で遊んで、大きな声で笑うから、いつも、そばにいる子が仲間に入りたがった。やっちゃんのお父さんは、
「いいよ!遊ぼう!」
と言って、誰でも仲間に入れてあげていた。
やっちゃんのお家のお庭で水かけっこをした時は、やっちゃんのお父さんがズルをしてホースを持ち出した。ウハハ、と笑いながら、ジョバジョバと水をかけてくるやっちゃんのお父さんに、
「ずるいよっ!」
と言いながら、やっちゃんと私は大笑いした。
その声を聞いて庭に出てきたおばちゃんが、洗濯物がーッ!と慌てて、物干し竿から洗濯物を回収した。やっちゃんのお父さんが、ウヒョヒョ、と笑いながら、おばちゃんにも水を掛け、おばちゃんは驚いて、そのあと、やっちゃんのお父さんに負けないくらいの大きな声で笑った。
おばちゃんがやっちゃんのお父さんを捕まえて、やっちゃんがホースを奪い、私はやっちゃんのお父さんのズボンのゴムをひっぱった。やっちゃんがそこにホースを突っ込み、やっちゃんのお父さんが、ウヒョー、と笑った。
グショグショになった私たちがタオルで体をふいていると、おばちゃんに呼ばれたお母さんとお父さんが、私の着替えと、アイスと、トウモロコシを持ってやってきた。
お父さんが笑いながら、なんで二人まで濡れてるの?、と言っておばちゃんとやっちゃんのお父さんを指さした。大人4人がケタケタ笑い、私とやっちゃんは顔を見合わせた。
「だって、水かけっこしたもんね。」
「そうだよね。」
やっちゃんと私の会話を聞いて、また大人たちが笑う。よく分からないけど、楽しい気持ちになり、私たちも笑う。
あんなに笑ってたのに。
一番よく笑うやっちゃんのお父さんがいなくなって、みんなもあまり笑わなくなって、やっちゃんは不思議な子になって。
やっちゃんを見ると、
「お父さん、どこにいるんだろう?」
と聞かれる。
「おばちゃんに聞いてみる?」
私が聞くと、やっちゃんは少し考えた後
「そうする。」
と言って、家の方向に歩き出した。
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