やっちゃんのお父さん

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昨日の夜、お父さんとお母さんと3人で、やっちゃんの家に行った。 明日で、やっちゃんのお父さんがいなくなって1年だからお線香をあげにいこう、とお母さんが言ったから。 1年経った日より、1年経つ前の日のほうが、きっと寂しいだろうからって。 お母さんが言った通り、おばちゃんは泣いていて、やっちゃんは2階の自分の部屋に閉じこもっていた。お線香をあげて、おばちゃんが出してくれたお菓子を食べていたら、やっちゃんが下りてきた。 「お父さんに会えるかもしれない。」 やっちゃんが変な本を私たちに見せた。そこには、やっちゃんのお父さんと同じように、飛行機ごといなくなった人が、その1年後、一晩だけ戻ってきた話が書いてあった。戻ってきた人に会えたのは子供だけで、大人は会いたくても会えなかったらしい。 「明日の夜、お父さんのお墓に行く。」 やっちゃんがいうと、大人たちは困った顔をした。 おばちゃんが一緒に行くと言ったけど、大人はダメみたい、とやっちゃんが言って、大人たちはもっと困った顔をした。 「私も行く。」 私が手をあげると、大人たちは顔を見合わせた。 色々話して、防犯ベルとお父さんの携帯を持っていくこと、夕方から行って、暗くなったら帰ってくること、と約束して、二人でお墓に行くことになった。 だけど、暗いお墓は怖いだけで、やっちゃんのお父さんはいなかった。 やっちゃんはがっかりしたかな。私はちょっと安心した。 やっちゃんのお父さんには、お墓はなんだか似合わない。きっともっと楽しくて、みんなが好きな場所にいる。そういう場所にいてほしい。
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