やっちゃんのお父さん

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家につくとおばちゃんが、お線香あげてやって、と言い、みんなでやっちゃんの家に入る。 玄関の鍵が開いていて、おばちゃんが、開けっ放しだった、と舌を出す。 みんなでリビングに入ると、 「おかえりー。」 という声がして、やっちゃんのお父さんが、ニコニコしながら手を振っていた。やっちゃんがアイスを放り出し、抱きつく。 「家にいたんだっ!」 やっちゃんが言うと、 「そうだよー。」 とやっちゃんのお父さんが笑う。 大人たちは固まって、何も言わない。でも、おばちゃんの目からは涙がボロボロこぼれている。 やっちゃんのお父さんが、おばちゃんの方を見て優しく笑い、手を伸ばす。 おばちゃんがパタパタッと走って、やっちゃんとやっちゃんのお父さんを抱きしめる。 「本物?」 お父さんがきく。やっちゃんのお父さんが、ウハハ、と笑う。 「ローザントッテのアイス、冷蔵庫に入れといたぞ。」 やっちゃんのお父さんが、やっちゃんとおばちゃんに言うと 「買い物できるの?」 とやっちゃんが聞く。 「厳密なことは分からない。」 やっちゃんのお父さんが言い、聞いてたの?、とやっちゃんがきく。 「ゆうちゃんのお父さんが言ってただろ。いつもやっちゃんのそばで笑ってるって。それ、正解。」 やっちゃんが、お父さんの方を向いて、やったね、正解だって、と言う。 お父さんが、ありがとう、と呟く。 「お父さんのアイスも買ってきたんだよ。さっき投げちゃったけど。」 やっちゃんが言って、アイスはどこかとあたりを見渡すので、私は紙袋を拾って近づき、やっちゃんのお父さんに、はい、と渡す。 やっちゃんのお父さんが受取り、私の頭を撫でる。 「ゆうちゃん、いつも2人のそばにいてくれて、ありがとう。」 「どういたしまして。」 私は嬉しくて、恥ずかしくて、チラッとお母さんとお父さんの方を見る。 二人はいつの間にか泣いていて、私に向って、うんうん、と頷く。 やっちゃんのお父さんが、お父さんとお母さんを見て 「ありがとう。」 と言うと、2人も近づいてきて、全員を抱えるように抱きしめる。
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