惑わされる心

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惑わされる心

"家庭を壊す気はない" それは、私のため? あなたのため? セフレにはもってこいな物件... 隼人はそう思っているのかな... 家庭があるから旦那にばれさえしなければ面倒な関係にはならない。 寂しい人妻ならセフレにしやすい。 そう思われているのかな... 心の中で得体の知れないモヤモヤした感情が膨らんでくる。 大丈夫。 分かってたはず。 ちょっと何処かで期待しちゃっただけ。 「すみません、ジンジャーハイってできます?」 「できない!」 「じゃぁハイボールお願いします」 「あ、レモンサワーも!」 残っていたレモンサワーを飲みほし、おかわりを注文する。 「もう飲んだの?」 「飲めって言われたから 笑」 まだ足りない。 もっと酔っぱらわなきゃこのモヤモヤはなくならない。 「てかあの店員なんなの? できない!じゃなくて できません だろ?」 「そーだね 笑」 「あいつもそう。入ってすぐため口だったし。」 「もー、おこらないで 笑」 「俺酔っぱらうとすぐおこるから 笑」 「そーなんだ 笑 私初めてみたけど 笑」 「だめなの。先輩とか上司でもないやつにいきなりため口聞かれるとイラッとする。俺仕事では年下にもちゃんと敬語使ってるのに。接客で敬語使えないとかあり得ない。普段はおさえてるけど、酔っぱらうと言っちゃう」 「言っちゃうんだ 笑 でも今日はもう怒らないで」 「うん。あ、この間あのスナックに行ったよ。」 「お!どーだった?」 「生意気な女がいてムカついて途中で帰った 笑」 「え 笑」 「金曜の夜りかちゃんからいきなり連絡きてさ、あれっきり連絡なかったのに。時間空いちゃったからご飯いきましょーって。同伴なくなったんじゃねぇの?でも俺パチンコしてたから断った 笑 次の日仕事だったし。だから、代わりに土曜行くねって言って、行ってきた」 「そーだったんだ」 ちょっと妬いちゃう。 りかちゃんだからじゃない。 隼人が他の女の子と繋がってることを実感させられるのは辛い。 「でももー行かない」 「なんで?」 「楽しくない」 「え 笑 楽しめたって言ってたじゃん 笑」 「あれはお前がいたから。お前と行った時が一番楽しかった」 「なにそれ 笑」 本当は嬉しかった。 心から嬉しかった。 他に言葉が見つからないくらい。 隼人は、私と飲んでいる時間を本当に楽しんでくれているんだ。 やばい。 酔いもあって気分が高まる。 「お手洗い行ってくる」 ちょっと飲みすぎた。 頭を冷やさなきゃ、冷静さを取り戻さなきゃ。 それに、化粧も直さなきゃ。 気持ちを戻してから隼人の所に戻ると、さっき注文したレモンサワーが来ていた。 「あ、落ちましたよ」 店員さんに言われて見ると、ピンクのストールが床に落ちていた。 「あ、ありがとうございます」 「カウンターの下に置けるようになってるので、使って下さい。」 「はい、ありがとうございま...」 「これは俺が使うの。」 ストールをたたもうとしたら、隼人がそれを取り上げた。 このストールはさっきまで隼人の膝にあったもの。 お店に来てこの席に座った時、寒がった隼人の膝に私がかけた。 きっと隼人がお手洗いに行く時に背もたれにかけたまま、いつの間にか落ちてしまったのだろう。 私から取り上げたストールを、隼人はまた自分の膝にのせる。 まるで独占したいかのように。 でもきっと気のせい。 きっともう寒さは感じていないはずなのに、自分の膝にないことにも気づいていなかったはずなのに、どうして? こういうちょっとした事の積み重ねが、私の心を惑わす。 新しく来たレモンサワーとハイボールを飲み終わる頃には、私達はほろ酔い状態を通り越していた。
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