お前が優先

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お前が優先

「今日何時まで大丈夫なの?」 「んー... 夕方くらい?」 「じゃぁそろそろ帰った方がいい?」 時刻は16時。 時の流れが早すぎる。 「...まだ帰りたくない」 酔っぱらってなきゃ言えない言葉。 「じゃぁどーすんの?」 まだ一緒にいたい。 でも隼人が聞いているのはきっとそんなことじゃない。 「まだ帰らなくて大丈夫なの?」 「夕方までに帰ってこいって言われた訳じゃない。何時位に帰るの?って聞かれて、夕方くらいかなって言ったら、夕飯は食べてこないんだ?って言われたから、夕飯食べてきていいの?って聞いたら、別にいいよって言われた。」 「気にしてないんだな。」 「うん」 「で、どーする? 場所変えるとしたら、どこ行く?」 隼人の質問の真意は分かってる。 この居酒屋さんを出るなら、行き先の選択肢はひとつ。 「ホテル行く?」 一呼吸置いて隼人が言った。 やっぱりそうなるよね... 「ホテルは...いかない。」 「いやなの?」 「いやじゃないけど...」 「今旦那さんのこと考えてるんでしょ?」 「.....」 「お前は、お前と子供の事だけ考えてればいいの。」 私に不倫させる旦那が悪いと? そう言われた気がした。 「ホテルは...だめ。」 「じゃぁどーすんだよ 笑 俺、お前が何時に帰るかわかんないけど昼から飲んですぐ解散になったら寂しすぎるから、お前が帰ったら別のやつと飲みに行く事にしてんの。ランチしてすぐ解散の可能性もあったし。」 「え!ごめん!何時から!?」 「決めてない。お前が帰ったら連絡するって言ってある。」 「ごめん。じゃぁ帰ったがいっか!」 「いや、お前が優先だから。そいつにもそう言ってあるし。」 いやいや、でも相手はいつになるかもわからずずっと待ってるってことだよね? それは申し訳ない。 「でも...」 「だから、前もって時間決めてほしい」 「わかった。」 ごめんね。 隼人の優しさに甘えすぎていた。 確かに、昼間から飲んで夕方解散してもまだ帰りたくないよね。 その時隼人のスマホが鳴った。 LINEの通知音。 「その人からじゃない?何時くらいになりそ?って」 「いや、キャバ嬢からだった」 携帯を確認した隼人が言う。 「あ、今日来ないのー?って?笑」 「いや、今日店休み」 「あ、そーなんだ...」 店休でも連絡くるんだ。 営業LINEじゃないってことだ。 きっと日常的に連絡とりあってるんだ。 そのキャバ嬢は、きっと7年前の私と同じ。 やっぱり、隼人のまわりには女の子がたえないんだ。 「じゃぁ、カラオケにする?」 「...うん」 「俺ら歌わないのに?笑」 「...うん」 まだ一緒にいたい。 でもホテルには行かない。 男からしたらもどかしいよね。 勝手すぎだよね。 隼人がどうしたいかなんて分かってる。 ""お前が優先だから。"" 正直嬉しかった。 ヤりたいだけだとしても、それでも嬉しかった。 こんなこと、誰にも言われたことなかったから。 今の隼人は私が独占してるんだって思えた。 今の隼人は、私との時間を最優先に大切にしようとしてくれているんだって思えた。 それがただヤりたいだけだとしても。 「じゃぁ、これ飲んだら行こっか」 「うん」 最後に注文したお酒はあと半分程。 隼人の方はもう殆どない。 「お手洗い行ってくる」 隼人のもとを離れた私は "夕飯食べて帰ることになりそう💦ごめんね💦" 涼雅君に連絡。 口臭ケアのカプセルを口に入れる。 噛んだ瞬間に口の中は爽快。 そして化粧直し。 この後私はきっと隼人に抱かれる。 後悔なんてしない。 本当は心の奥底ではずっと望んでた。 7年前の幸せな時間を、もう一度感じたい。ずっとそう思ってた。 私が本気で断れば、きっと隼人はホテルへは行かない。 でも、私は本気では断れない。 いやじゃないから。 本当はそうしたいから。 自分の心を整理して、身なりも整え、すぐに隼人のもとへ戻る。
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