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欲しかった言葉
「ごめんね。」
私の目をまっすぐ見て謝る隼人。
「んーん」
涙が頬を伝う。
涙が止まらないのは、ずっと閉じ込めていた想いをやっと分かってもらえた安堵。
でもそれだけじゃない。
"ごめんね。" その先に言葉がないのは、やっぱり私は隼人にとってただのセフレ。
今も昔も。
それを改めて実感した悲しみの涙。
私が欲しいのは "ごめんね。" じゃない。
じゃぁ何が欲しいのかと聞かれたら、自分でもわからない。
だって私は人妻。
ごめんね。以上に何か言われても、どうにもならない現実。
分かってるのに、隼人の心が欲しい。
今だけ。今だけでいいから、隼人の心が欲しい。
隼人がソファーに座り直して後ろから私を抱き締める。
そして唇が塞がれた。
さっきの続きをしよう。そう言われた気がした。
ソファーに押し倒され、隼人の手が私の胸に触った時
「待って。まだだめ。」
「なに?」
再び阻止された隼人の声からはちょっと苛立ちを感じる。
ごめんね。
でも、これだけは聞いておきたい。
分かってるのに、答えなんて分かってるのに。
「まだ聞いときたいことがある」
「なに?笑 こわいんだけど 笑」
押し倒された状態のまま聞いてみる。
「また私はセフレになっちゃった?」
絞り出すように聞いた。
今まで何度も飲み込んだこのセリフ。
答えなんて分かってる。
「ちがうよ」
そう。そう言って欲しかった。
ずっと。7年間ずっと。
"違う"なんてただ私を傷つけないための嘘。
と言えばまだ聞こえはいいか。
きっと都合良く扱うための適当な返事にしか過ぎない。
分かってる。
でも、ずっとこの言葉が欲しかった。
それが嘘だとしても。
モヤモヤがすーっと晴れた気がした。
"ちがうよ"そう言った隼人は私に覆い被さったまま再び私の唇を塞ぐ。
セフレではないなら、私はなんなのか。
それ以上聞くことはしない。
"ちがうよ"ただこの言葉だけで十分。
隼人の深いキスを受け入れる。
それが心の準備が出来た合図。
私の合図を感じ取った隼人は、慣れた手つきでブラジャーのホックを外し、洋服に手をかけた。
今度はボタンじゃない。
ソファーに押し倒した女の子の洋服を、これほどまでに一気に、一瞬で脱がせる事の出来る男がどれだけいるだろう。
一瞬で上半身裸にさせられた。
「ちょっと...まって」
「やだ」
さんざん焦らされた隼人はもう止める気はない。
すぐに私のズボンへと手をかけ、下着ごと剥ぎ取った。
「電気!電気けして!」
隠すものが無くなった私は恥じらいでいっぱい。
「やだ!」
私の必死のお願いも聞いてもらえず、隼人は私の唇を塞ぎながら自分も脱いでいく。
隼人がパンツ一枚になった所で唇は離れ、
「風呂入れてくる」
そう言って隼人はバスルームへ。
本当はお風呂沸かすのとか私がやらなきゃならないのに。
隼人はそんなことやる様な人じゃないはずなのに。
気が利かなくてごめん。
隼人に解放された私は、電気を消したくてベットの枕元の照明をいじってみた。
部屋の照明を全部OFFにしてみても、バスルームの照明の明るさで全然暗くない。
なんとかならないか色々調節していると
「お前エロいな」
お風呂を沸かしに行っていた隼人が戻るなり私をベットに押し倒し、私に覆い被さった。
さっきの続きをと言わんばかりにすぐに深いキスになり、右手が私の蜜部へとのびてきた。
油断していた。
てっきりお風呂が先なんだと思っていた。
隼人もそのつもりだったけど、ベットにいた私が誘ったようになっちゃったのかもしれない。
「あっ...だめ...」
体は7年前の記憶があるのか、好きな男に7年振りに触られて、濡れないはずがない。
キスだけで蜜部はもうとろとろ。
すぐに隼人の指が入ってきた。
「あっ..」
「本当は旦那さんにこうして欲しいの?」
私の中に入れた指をだんだん激しく動かしながら隼人が聞いてきた。
必死に横に首をふる。
違う。
涼雅君じゃない。隼人にしてほしかった。
もう私の心の中にいるのは隼人だよ?
涼雅君が相手してくれないから隼人としてるんじゃない。
きっかけはセックスレスだけど、隼人は涼雅君の代わりなんかじゃない。
今年に入って触れるどころかキスもしてないのは、涼雅君じゃなくて隼人にして欲しかったから。
そんな弁解をする余地もなく、隼人は私を攻める。
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