7年ぶりの再会 ~プロローグ~

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7年ぶりの再会 ~プロローグ~

「俺に連絡してきたってことは、旦那さんとなんかあったんだろ?じゃなきゃ俺なんかに連絡するはずない」 なぁんだ。分かってたんだ。 分かってて、ご飯に誘ってくれたんだ。 「ちょっとはストレス発散できた?」 そう言って彼は私の頭に手をのせる。 ストレス発散できたよ。できた所じゃない。 好きだった気持ちがよみがえりそうでこわい。 7年ぶりに再会した彼は何も変わってなくて、結婚・出産・退職と環境がまるで変わった私にとってはそれが嬉しかった。 変わらないものをずっと探してた。 ――彼と出会ったのは8年程前。 当時の彼氏がダメな男で、昼職しながら夜スナックで働いて、稼いだお金は殆ど彼氏に渡していた。 渡さなきゃいいのに、別れちゃえばいいのに、好きな気持ちがそうはさせなかった。 そんな時、当時働いていたスナックで出会ったのが隼人。 なかなか連絡先を教えてくれない隼人に私が提案したのはモーニングコール。 翌日仕事だからもう帰ると言う彼に、 「明日朝モーニングコールして起こすから、もう少し飲もうよ!!」 また来てもらう為に聞いた連絡先。 イケメンだし、話しやすいし、お店に来てくれたら私も楽しい♥️ 勿論翌朝ちゃんとモーニングコールをした。 それから毎日隼人にモーニングコールするのが私の日課になった。 彼氏に会えるのはお金を渡すときだけ。 普通に考えてありえない。 そんなのすぐに別れるべき。 それでも私は、もし彼の言ってる事が本当だったら?と考えてしまう。 好きだった。でも寂しかった。 会える日が決まると嬉しかった。けど、泣いた。 彼はお金の為に私に会う事は分かっていたから。 感覚が狂ってた。 お金貸してって言ってくる彼氏は初めてじゃなかったから。 男運がつくづくない。 上京してきて最初の彼氏は引っ越しやさん。別れてから知ったけど妻子持ちだった。 どうりで全然会えないし、メールもLINEもやってないとかおかしいと思ってた。 その後ナンパされて付き合った彼氏は、付き合って暫くしてから知らされた借金まみれ。この男との出会いが私が夜の町へ働きに出る最初のきっかけになった。 2年付き合って、色々あって別れて、その後付き合ったのがバツイチで養育費払ってる系男。 これも付き合って暫くしてから知らされた。だからお金がないんだと。 お前に使うお金なんてないんだよと。 お金貸してくれよと。 面と向かって言われた。 その後付き合ったのがホスト。メンタル弱ってた時にキャッチにつかまってついていってしまった。 この男が、先ほど紹介したお金の為に私に会う彼氏。 私の為にホストを辞めた。 新しい仕事が忙しくて、でもまだ新人だから給料も少なくて、ホスト時代に住んでたマンションの退去費用で貯金もなくなったらしい。 会えるのは駅のホーム。 30分も一緒にいれればいい方。 お金がなくてごはんもまともに食べてないと言う彼に、会える時は毎回お弁当を作っていった。 私のマンションに来ていいよと言っても、仕事がそっちの方じゃないし、ホスト時代の知り合いに会う可能性があるからと断られた。 寂しいどころじゃない。 辛かった。 でも私の為にホストを辞めてそうなったのなら、と考えると別れるなんて出来なかった。 寂しかった私にとって、毎朝隼人にかけるモーニングコールは毎日の楽しみになった。 モーニングコールして起こした後、仕事に行く準備が整った頃に「ありがとう!」とLINEがくる。 そこから少しLINEが続く。 初めて会ったあの日っきり会うことはなかったけど、毎日連絡を取り合っていた事で私の中では大きな存在になっていた。 そんな日々が暫く続いたある日の夜 隼人から着信。 モーニングコール以外に電話なんてしたことなかったのにどうしたんだろ? 驚きと嬉しさでいっぱいになりながら電話に出ると 「今から会える?飲んでて◯◯駅にいるんだけど、最寄りだよね?」 これが何を意味するのかなんて、私にもわかる。 「会えるよ」 迷う事はなかった。 元ホストの彼氏はまだ好きだったけど、寂しさには勝てなかった。 それに、隼人の存在が思ってた以上に大きくなっていて、たぶんもう既に好きが始まっていたんだと思う。 この日から、私は隼人のセフレになった。 隼人に会っている時は、寂しさも彼氏の事も忘れられた。 連絡もすぐに返ってくる。 電話にも出てくれる。 言ったことないけど、多分、会いたいと言えば会いに来てくれたと思う。 優しい。 私を女の子扱いしてくれる。 私が今まで我慢してきたものを全部くれた。 そうしているうちに、だんだん彼氏の事を考える時間が減り、別れる決心がついた。 勝手な女だよね。 あんなに辛くて寂しくても別れられなかったのに、次の男ができたら今までの男の事は忘れられちゃうなんて。 私は隼人の彼女ではない。ただのセフレなのに。 好きだった。けど言えなかった。 今までのどの彼氏よりも、幸せだと感じることが出来ていたから。 この関係が終わってしまうのが怖かった。 当たり前が当たり前じゃなかった私にとっては、連絡がとれて、会えて、結婚もしてなくて、お金もせびられない事が、本当に嬉しかった。 元ホストの彼氏と別れてから、その彼のLINEの画像に変化があった。 なんで気づいちゃったのかなぁ? 彼のLINEを削除しようとした時だったのかな? もう覚えてないけど、彼のLINEの画像が彼と、ギャルと、赤ちゃんの写真になっていた。 元彼も妻子持ちだった。ホストを辞めたのは私のためなんかじゃなかった。 またか。 でも彼に渡したお金は額が桁違いだった事もあって、怒りが込み上げてきた。 これって詐欺って言うんじゃないの? 結婚をちらつかせてお金を騙しとる。 結婚詐欺ってやつじゃないの? 家を知っていたら、私は今頃犯罪者になっていただろう。 そんな私の気持ちなんて知らずに隼人は私を抱く。 隼人がいたから、私は救われた。 過去は忘れよう。 どんなに考えたって戻ることは出来ない。 今を大切にしなきゃ。 セフレでもいい。それでも十分幸せだった。
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