お嫁さまの〇〇

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お嫁さまの〇〇

 朱音君が俺の嫁だなんて言い出した理由は分かったが、どうしたら安心させる事ができるのか、それが分からなかった。  流されるまま朱音君に身の回りの事や家の事をやってもらい、時間だけが過ぎていった。  朱音君が家に来てからすこぶる体調もよく、仕事も効率よくこなす事ができ今日は珍しく早い時間に帰る事ができた。  玄関を開けると俺のでも朱音君のでもない靴があり、奥から話し声が聞こえてきた。  楽しそうな笑い声。  朱音君の友だち、かな?  そっとリビングのドアを開くと朱音君とイケメン高校生の姿があった。  ソファーに座り勉強を教え合っているのか、肩をくっつけ何やらヒソヒソ。距離が近い。  ズキっ。 「――ただいま……」 「ひゃっ」  びくっと驚いて飛び上がる朱音君。慌てて離れる二人。  その様子にまたも心臓がズキズキと痛んだ。 「お帰りなさい! 早かったですね!」  朱音君は笑顔でそう言ったが、勘ぐってしまいたくなる。  早く帰って来るはずのない時間に俺が帰って来た。  そしてイケメン高校生と二人きりで肩を寄せ合っていた。  イケメン高校生は俺に気づくとぺこりと軽く頭を下げ、帰り支度を始めた。  スラりと伸びた手足バランスのいい体躯。シュッとした立ち姿。サラサラの髪に弾力のありそうなつるつるの肌。  それに比べて俺は運動不足のせいで少し脂がついてきてしまっただらしない身体とカサカサの肌に無精ひげ。  少しだけ背筋を伸ばしてみるがすぐに無駄な抵抗だと分かる。  あまりにも違いすぎる。 「勉強……していたんだろう? 俺はあっちいってるからまだいいよ?」 「い、いいえ。折角旦那さまが早くお帰りなんです。勉強なんていつでもできます」 「じゃ、朱音、明日」 「うん。今日はありがとう。また明日」  なんて事ないやりとり。だけど二人の交わす視線は意味ありげに見えた。  いつもとは違う男子高校生としてのキミの顔。その中に少しだけ隠されている色気。  俺は心中穏やかではいられなかった。  ――キミはそいつの事が好き、なのか……?  ――俺、今変な顔してないかな……? 普通にできてる、かな? 「――本当によかったのに……。朱音君はまだ高校生なんだから学業優先させないと。母さんからも言われてるし。――あーなんなら俺が教えようか?」 「え?――い、いえ。大丈夫です!」  大げさに手を振り焦ったように断るキミ。  あいつはよくて俺はダメなのか――。  ズキリと胸が痛むが、全部ぜんぶ気のせいにしたかった――。
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