最初の恋人 最後の恋人

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 俺の仕事は介護福祉士。昼間はデイサービスの利用者のお世話をしている。この仕事は体力勝負だから男手は随分と重宝されている。  過疎化の進んだこの地域では、入所するよりデイサービスの方が利用率は高い。利用者を福祉車両で送迎するのも俺の仕事だ。車に揺られている間も楽しく話をしながら移動をする。そんな他愛もない時間も利用者からしたら幸せな時間だ。  仕事が終わると今度は自宅で母の相手をする。母の余命はわずか。出来るだけ側に居てやりたい。ただそれだけのために寝る時間を削って母の側に居る。 「母さん、今日は顔色がいいね」  ベッドに横たわる母の手を握った。 「ゆうくん、仕事終わったの?」 「うん。無事に終わりました。今日も沢山の人のお世話をする事が出来たよ。今から母さんのお世話をする時間だよ」 「だからお世話なんてやめてよ。話し相手でいいんだから」  母さんは毎回そう言って笑う。  俺が介護福祉士になったのは、いずれ老いゆく母さんの面倒をみたいと思ったからだ。  両親は俺が小さい頃に離婚した。父さんの身勝手な理由で俺と母さんは捨てられた。今まで何一つ贅沢な事はしていない。人並み以下の生活だったけど、俺には母さんがいたから頑張れた。  俺も働くようになり、やっと母さんに楽をさせてあげられると思った矢先、母さんに癌が見付かった。  介護福祉士になったのは、母さんに楽しい老後を送ってもらうために選んだ職業。たくさん面倒をみてもらった分、恩返しがしたいと思ったからだ。だけどまさかこんな状況の母さんを相手にするなんて考えてもみなかった。
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