私と父の登校模様

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私と父の登校模様

 父の小学校と私の高校は近くなので 途中までいつも一緒に歩く  父は必ず車道側を歩き 私の手を握る  傍目から見たら私が父を送っているように見えるかもしれないが 父は私を守っているつもりだ かわいい  父の小学校の方が私の高校より手前なので 父の小学校の近くになると いつも父の同級生に出くわす  「やーい 翼 今日も姉ちゃんと手繋いで登校かよ」  父の同級生は父をいつもからかう  そして私たちが親娘(おやこ)であるのをほとんど誰も知らない  私を守っているつもりの父は少しも動じず堂々としている  その姿はとても愛しい  わかれる場所に着くと  父はいつも  「くれぐれも気をつけてね」  と私に言う  「うん いってくるね」  「いってらっしゃい」  私の姿が見えなくなるまで父は私をずっと見守ってくれている  距離にして120m 普通に歩くと1分半くらいだ  振り返ると必ず父は小さな手を振ってくれる  愛しい  私はゆっくり歩いて 何度も何度も振り返る  父はその度に手を振ってくれる  ずっと振り返っていたい いつもそう思う  必ず父は待ってくれているから  でもその氣持ちに蓋をして 私は学校に向かう  これが私と父の登校模様だ
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