1人が本棚に入れています
本棚に追加
ホームルームが終わり、リュックを背負い外へ出る。まっすぐ帰れると思ったのに、雨が降っていた。晴れの予報だったからあいにく今日は傘を持っておらず、玄関から出てくる人たちを見送る形になってしまった。友達がいないため相合い傘なんてことは出来ない。
私の思いと反して、だんだん雨は強くなっていく。玄関先に立ったままどれくらい経ったろう。弱まる気配が無いので、このまま帰ってしまおうか。そんなことを考えていた。
「ほい、そこの美少女。これ使って早く帰んな」
「…私の事…ですよね?」
「あんた以外誰がいるんだよ」
「おいキリサ!何ナンパしてんだよ!さっさと行くぞ〜」
「はいはーい!てかしてねーから!!
じゃ、そゆことで俺もう行くから。これ返すのあんたの気が向いたらで良いから……て、おい!ユウ!相合い傘しよーぜ」
そう言葉と折りたたみ傘を残して、彼は友達ののとこまで駆けていった。
二人は校内でも結構有名で、噂に疎い私でも知っている。有名というのは決していい意味ではない。不良、といったところか。顔は二人とも良いらしく、アウトローな感じが女子には人気なんだそうだ。私は小さい頃から『イケメン』という分類は見慣れているから分からないけど。
「あ?俺は彼女しか傘に入れねーって決めてんの」
「いた事ねーだろお前」
「うるさい!これからだこれから!明日にはきっと学校中の女子にモテモテで俺だけのハーレムが…ムフフフフ」
「きもっ!いや〜んハレンチね。何、俺襲われちゃう?」
「女子って言ってるだろ女子って!!キリサはどう見たって男だろ」
相合い傘した男二人がそんな話をしてるのが聞こえる。続きは遠ざかっていき聞こえなくなった。
驚きでそのまましばらく立ったまま、もう見えないはずの後ろ姿を見つめていた。
はっと我に返り、家に帰ることにした。
最初のコメントを投稿しよう!