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ぼくは何をやっても普通だ。
特別に足が速いとか、特別に勉強が出来るとか、特別に絵がうまいとか、特別に人に優しくできるとか、特別人に好かれるとか、そういうものをひとつも持っていない。
だから、周りにいるそういう人達がうらやましくてたまらなかった。
人には必ず特別なモノがひとつある。そういう話しを聞いてから、ぼくは自分自身の中にある特別なものをずっとずっと探していた。でも、どれだけ探しても、特別なものなんてひとつも無くて。特別悪いものもないけど、いいものも無い。何もない。
ぼくには何もない。
そんなぼくに、てるてる坊主が特別な力をくれた!めちゃくちゃ嬉しい!これでぼくにも特別なモノが出来たんだ!
でも、ぼくの特別な力って何だろう?
「ねぇ、てるてる坊主?」
「はイ。何でしょウ?」
「ぼくにくれた特別な力って何?」
ワクワクする気持ちをグッとこらえ、めちゃくちゃ喜んでいることを必死に隠しながらぼくはてるてる坊主に話しかけた。
「それはですネ」
「それは?」
「ワタシのことを、これからずっと見ることが出来まス」
「へっ?!」
ぼくの口から変な声が出た。
特別な力って、てるてる坊主がこれからも見れる力ってこと?それって誰得?ぼくが欲しかったのはそんなよくわからない力じゃなくて、もっと凄いチカラなのに。何をどうしたらそんなチカラをつけようっていうことになったんだろう…。
がっくりと肩を落とすぼくをそのままに、てるてる坊主は続ける。
「あとハ」
「そうだよね、それだけじゃないよね。うん。で、後は?」
気を取り直して。
特別な力がそんなもんだとは思ってなかったよ。うん。本当に。本当はもっと凄い力なんでしょ?期待しながらてるてる坊主の次の言葉を待っているぼくにかけられた言葉は、次のようなものだった。
「まあ、色々なものが見えるようになりましタ」
なにそれ。適当。
半分放心状態なぼくに顔を向けたてるてる坊主は、にっこりと笑った。ような気がする。
「一緒に世界を守ろうじゃありませんカ」
え?これからペアってこと?
「よろしくお願いしますネ」
色々なものが見えたら世界が救えるんだろうか?
「あ、はい。お願いします」
なんだかわからないけど、思わずよろしくお願いしてしまった。
あの日の帰り道、ぼくはてるてる坊主に『テル子』という名前を付けた。
テル子はいつも目立たないように身体を小さくして、ぼくとずっと一緒に行動している。
そして、ぼくはテル子があの時言ったように、お化けや幽霊、妖怪などの色々なものが見えるようになった。そして、何か悪いことをしているヤツを見つけたら、2人でこっそりと解決している。
世界を守る。
特別な力。
なんて言うと、物凄くカッコよく聞こえるけど、実際の所はどうなんだろう?
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