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放課後
「ウヤマエ君と山田が言ってた『例のアレ』って、最近噂になってるアレのことでしょ?」
足をぶらぶらとさせながら、ぼくはテル子に話しかける。
夕焼けに空が染まるとき
雨がふったらきをつけて
つってくれといいながら
アレが後ろをついてくる
夕焼けで空が赤く染まっているときに雨が降ると、後ろから「つってくれー」と言いながら『アレ』が追いかけてくるらしい。そして『アレ』の言う通りにつってやると、なんでも願いが叶うだとかなんだとか…
ぼくはテル子と初めて会った、あの時のことを思い出さずにはいられない。
はじめは『クルッと巻いてキュッとつって』なんて、さらっと恐ろしいことを言ってたくせに、いざ紐をくくったら「つってくれー」って物凄い声を出しながら追いかけてきたテル子。
今回のアレの噂と違うことといえば『夕焼けの時間帯の雨』くらいじゃん。
そもそも、あの時のテル子は何かに足を挟まれてあの場所から動けなかったからずっとあそこにいただけで、本当なら雨の夕焼けの時までどこかに隠れていたのかもしれないし…。
そんなことを考えているうちに、ぼくは適当に考えていたことを口からぽろっとこぼしてしまった。
「もしかしてテル子、バイトでもはじめた?」
おっと、口が滑った。
テル子がバイトをするだなんてこれっぽっちも思ってもいないのに。でも、出てしまったものはしょうがない。ぼくはカバンにプラプラとぶら下がっているテル子に真っ直ぐな視線をぶつけた。するとテル子は心外だと言いたげな口調で反論した。
「そんなわけないでしョ」
あ、ちょっと怒ってる。
「確かにテル子がバイトしたって、お金の使い道ないよなぁ。それに最近はずっとぼくのカバンにつられっぱなしだから、どこかに行くにもひと手間かかって面倒か。あ、じゃぁもしかして、アレっていうのはテル子のお兄ちゃんとか?だって、テル子とそっくりじゃない?そういえばテル子って兄弟いるの?今までそういう話、聞いたことなかったけど」
一度話始めると、思ったことがどんどんと口からあふれ出てくる。もう頭で考えているのと、口から言葉が出ているのと同じタイミングなんじゃない?なんてことを考えているにもかかわらず、ぼくの口からは普段からテル子に対して思っていた疑問が次々と飛び出してくる。
「でも、どう考えてもテル子なんだよなぁ」
いて…
そう言った瞬間、額にチクリとした痛みが走った。
やばい。
「なーんてな。ごめんごめん」
慌てて誤魔化してみるも、額のチクリとした痛みはチリチリとした継続した痛みに変わりつつある。
「ごめんて!ぼくが悪かった。ほんっとうに申し訳ない」
両手を顔の前で合わせ、拝みこむようにしてテル子に謝る続けていると、徐々に額の痛みは引いてきた。
ふぅ…。あぶなかった…。
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