テル子との出会い

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 その後ぼく達は家の中に入ると、おばあちゃんの提案により、麦茶を一緒に飲みながら台所で『作戦会議』をすることにした。  よく冷えた麦茶をごくっと飲み込むと、思わず「ぷはぁ!」と声が出る。そんなぼくの様子を見て、おばあちゃんも一口麦茶を飲むと「ぷはぁ!」と大げさに声をあげる。そうやって2人で順番に楽しくお茶を飲んでいたら、急におばあちゃんはキリリとした口調でこう言った。 「ひとし隊長!この度の作戦会議では、遵守すべき規則を作りたいと思います!」 「じゅんしゅ?きそく?」  麦茶の入ったコップを両手で持ったまま、ぼくは急にキリリとしたおばあちゃんの顔を、ぽかんと口を開けたまま見つめた。呆けているぼくの顔をじっと見つめ返しながら、おばあちゃんは少し表情を崩しながらゆっくりとこう続ける。 「遵守っていうのは、絶対に守らないといけないっていうこと。規則はルール……。おやくそくのこと。わかるかな?」 「えーっと。おばあちゃんの家に止まっている間の破っちゃいけないおやくそくを決めるっていうこと?」  ぼくが考えながらゆっくりとそう口にすると、おばあちゃんは大きな声で 「そうであります!」  と勢いよく叫んだ。ぼくはびっくりしすぎて笑ってしまった。おばあちゃんはいつも面白い。 「おばあちゃん隊長!」  ぼくもおばあちゃんのマネをして、おばあちゃんに提案をする。 「なんでありますか!ひとし隊長!?」  真面目な顔をしておばあちゃんが答えたものだから面白くって、そこからぼくたちは息が出来なくなるくらいしばらく笑い続けた。  少し落ち着いてきてぼくが涙を拭きながらお茶を飲んでいると、おばあちゃんはいつの間にか廊下を挟んだ反対側にある居間へと移動していて、ぼくにおいでおいでと手招きをしていた。ぼくは麦茶を持ちながら、おばあちゃんに呼ばれるがまま居間へと移動する。部屋の真ん中にあるちゃぶ台の上には、ちゃぶ台が見えないくらい大きな壁掛けカレンダーサイズの白い紙が広げて置いてある。 「ひとし隊長!決まったことは、ここに書いて壁に張っておこうと思うのですが、いかがでしょうか!?」  ちゃぶ台の横には、太いのや細いの等沢山のカラーペンが入ったクッキーの缶が置いてある。おばあちゃんはその中から一番太い黒色のペンを取り出すと、ポンッと言い音を立てながらキャップを開け、広げた紙の上にキュキュキュっといい音を響かせながらペンを走らせた。 ”たいちょうのおやくそく”  一番上に大きな文字でそう書いた後、おばあちゃんは 「ひとし隊長とおばあちゃん隊長とのお約束だからね!」  とニコっと笑った。隊長のお約束ってそういうこと?! 「さあ、一番は何にしようか?」  おばあちゃんがぼくの顔をニコニコと笑いながら見ている中、ぼくも缶から水色のペンを一本取り出した。キュキュキュっといい音をたてながら、ぼくは紙の下の方にぼくとおばあちゃんの笑っている顔を並べて描いた。 「ひとし隊長、これはいいですなぁ」 「でしょー」  ぼくは得意げにおばあちゃんにそう答えると、次は缶から青いペンを取り出しておばあちゃんに手渡した。 「ぼくは字が上手くないから、おばあちゃん書いてくれる?えっとねぇ、1番は『お手伝いを頑張る』ってどうお?」 「いいですね!ひとし隊長!」  おばあちゃんはそう言うとぼくから受け取ったペンで”隊長のお約束”の下に ”1.おてつだいをがんばる”  と書いてくれた。 「さあ、後は……『一人では危ない場所に行かない』なんてどうでしょう?ひとし隊長?」 「いいですね、おばあちゃん隊長!では、それを書いてください!」  そんな調子で、ぼくとおばあちゃんの間で守らなくてはいけない約束が4つ決められた。
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