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「挟まってるのヨ」
てるてる坊主の見つめる先には、よくわからない罠の失敗作みたいなのが挟まっていて、自分の力では抜け出せないみたいだ。
「両端、引っ張ってみたら?とれない?」
「手がないのヨ」
そう言われてマジマジとてるてる坊主を見てみると、てるてる坊主はきちんとしたてるてる坊主の形をしていて、手も足もついていなかった。
「なるほど」
「なるほどじゃないわヨ」
怒られた。
「これ、外してあげようか?」
「呪うわヨ」
「え?!」
「うそヨ」
表情のないてるてる坊主にそう言われると、本当か嘘か全くわからない。うーん。どうしよう。このままこのてるてる坊主を置いて帰ってしまうと、今晩気になって気になって寝られないかもしれない。でも呪われるのは嫌だしなぁ……
「呪わないわヨ」
「本当に?」
疑わしい目を向けるぼくに真っ直ぐに顔をむけたまま、てるてる坊主はこう続ける。
「外してつってくれたらなんでも願いを叶えてあげるわヨ」
「つるってどういう事?キミをどこかにぶら下げたらいいの?どうやって?」
「持ち上げてどこでもいいからつってくれたらいいのヨ。首に紐をくるっとまいテ」
なんかすごく怖いことを言われた気がする。
「ん-ー。まぁ、それは置いといて。とりあえず、これ外すよ?」
そう言うと、ぼくはてるてる坊主の足元(?)にしゃがみ込むと、その辺りに落ちていた枝や石を使って一生懸命罠みたいなやつを外した。
「ありがとウ」
「どういたしまして」
「じゃあ、つってちょうだイ」
まじか。
「ん-……」
ぼくが動き出さないのを見て、てるてる坊主はふわふわとぼくの秘密基地のある方向へと移動し始める。
「こっチ。こっチ」
ぼくは言われるがまま、ふわふわと進んで行くてるてる坊主の後をついて歩き始めた。
秘密基地の場所まで来ると、てるてる坊主はいつどこで見つけたのかわからないけど、いつのまにか2mほどの長さのロープを肩の辺りから垂らしていた。いつのまに。
「これでつってちょうだイ。首にロープをクルっとまいてネ。キュッとつったらいいかラ。そしたら願い事、なんでも叶えてあげられル」
やっぱり、さらりととんでもないことを言われている気がする。
ぼくはてるてる坊主にこう尋ねる。
「願い事はなんでもいいの?どんなことでも?ありえないことでも?」
「もちろんなんでも叶えてあげられル。ほら、はやくクルっと巻いてキュッとつっテ」
「なんでつらないといけないの?」
「てるてる坊主が力を発揮するためには、しっかりとつらないト。つられていないてるてる坊主は、ただのごミ」
え…?
てるてる坊主ってそういう存在だったっけ……。
「だから、クルっとネ。キュッとネ」
段々と早口になるてるてる坊主を上から下まで順番にしっかりと見た後、ぼくは残念そうな声でこう言った。
「願いをかなえて欲しいからつってあげたいんだけど、キミ、大きすぎてぼくにはクルっもキュッもできそうもないんだよね」
それを聞いたてるてる坊主は、そんなこと何でもないと言った感じで、今まで通りに淡々とぼくに
「だいじょうブ。小さくなれるかラ」
というと、シュルシュルとぼくの手に乗っかるくらいまで小さくなった。
「ほラ。これでだいじょうブ。さぁさぁ、キュッとやっちゃっテ」
ぼくはてるてる坊主と一緒に小さくなったロープを恐る恐る手に取り、てるてる坊主の首の辺りにくるくると2周巻き付けると、外れないように優しく結んだ。
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