母親伝説

パート６

カリッカリッカリッ

「こんな感じかなぁ」

　私は今小さいお地蔵さんを彫っている。今のブームは彫刻をすることだ。
　将来は大きな龍を彫ろうと思っている。慣れるまでは小さいお地蔵さんを彫ってだんだん大きくしていこうと考えている。

カリッカリッカリッ

　頭を丸くするのは苦手だけど、できるのは楽しい。

カリッカリッカリッ

「よし、できた」

　やっと完成。可愛らしいお地蔵さんの体ができた。目とかはさすがにできないからハンダゴテでやらないといけない。

　ハンダゴテ明日買うか。

「まだ目はできないから、先に新しいお地蔵さん作ろう」

　どの木が良いかなぁ。やっぱり彫りやすい方が良いか。

ガラガラ

「この木が良いや」

　丁度いい木を見つけた。これならきれいなお地蔵さんが作れる。

カリッカリッカリッ

ガリッ

「痛っ！」

　やっちゃった……。彫刻刀が親指を切った。痛い……。

「血が出てないからまだ大丈夫かな」

　そう考えた私は体の繊維についてあまり理解していなかった。

「わわっ、いっぱい出てきた」

『人体の繊維は縦にできている。よって縦に傷ができても傷はすぐに治る。しかし、縦に対して垂直に横に傷ができると、その傷はどんどん広がって柔らかくなっていくため、治りにくい（経験者の話）』

　そういえばそんなこと誰かが言ってたな。

「とりあえず止血しないと」

　血がどんどん出てくる。ティッシュで止血してるけど、全然止まんない。

　ゴミ箱の中が血がついたティッシュでいっぱいになってくる。
　この様子じゃ、病院に行かないといけない。

　めんどくせぇ。