母親伝説

パート５

カタカタカタカタッ

「……」

カタカタカタカタッ

　今日の依頼は布マスク30個。今日中に作って依頼主に渡さなければならない。

「はぁ」

カタカタカタカタッ

　布マスクを作るのは構わないの。布があれば30分で1個はできるから問題は無いから。
　でも、流石に30個は多すぎる。

　なんでそんなにたくさん注文するんだ。しかも1日で終わらせろとか意味わからん。

「ありえない」

　依頼主頭狂ってるんじゃね？

カタカタカタカタッ

カタカタカタカタッ

「できた。次」

　かれこれ4時間。現在8個目が完成。どんなに頑張っても30分より早く作ることはできない。
　雑な布マスクでも良いんだったら別に10分あればできるんだけど。

「だめだよなぁ」

　たとえ無茶な注文でもきちんとやらないと。それがうちの店のモットーなんだ。

「でも、やっぱりありえないよな」

　30個は多い。いくらなんでも多い。

「めんどくせぇ」

カタカタカタカタッ

カタカタカタカタッ
・・・
・・
・

カタカタカタカタッ

「あともうちょっと……」

　やっと27個目までこれた。長い……。もう少ししたらあの人が帰ってくる。帰ってきたらご飯の準備をしないといけないから早く終わらせたいのに。

「終わらねぇ。なんなんだあいつ」

カタカタカタカタッ

ガチャッ

「ただいま〜」
「あーおかえり」

　間に合わなかった……。

　布マスク作るのもう嫌だ。