いろどり

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元は紙パックの野菜ジュースを飲みほした。 「よっしゃ」 上着を抱え、大学で一番大きい講堂へと入っていく。 既に沢山の学生達が、それぞれの席へつくところだった。 檀上には卓上マイクがセットしてあり、スクリーンも用意されている。 最後、教授陣が教場の最前列へと腰掛け、卒業研究発表会が幕を開けた。 発表の持ち時間は1人5分。 各々が研究内容のサマリーを発表し、最後に総括として学長が講評を述べる。 学生達のテーマは介護食や食育,食文化,栄養素の科学分析等、その方向性は多岐に渡っていた。 そんな中、元はただ1冊の本『いろどり』を携えては、檀上へ上がる。 「私の卒業研究は、栄養士の世界へ誘ってくれた、この書についての考察です。 皆さんご存知の通り、今業界で知らない人はいない位の管理栄養士,しかしそんな彼女は、以前は食とは全く関係のないキャリアウーマンでした。 女性がまだお茶くみの要員としか捉えられていなかった時代、彼女は企業の渦中に飛び込み、第1線で活躍しました。 とにかく仕事が大好きでした。 他の社員と肩を並べて働けることが誇りであり、社会に貢献できることが生きがいでした。 部下を持ち、大きな仕事を成功させ、代表から賞賛され、昼夜問わず働いた 「そしてある日、過労で倒れました」
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