第18章01

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カルロス、やおらゆっくりと起き上がると、椅子に座って駿河を見て「…もしかして今晩、アンタが剣菱船長の誘いを断って飲みに行かずに船に残ったのは、俺に『黒船に戻りませんか』と話をする為だったとか?」 駿河「…うんまぁ」 カルロス「そういう事するから黒船に残りたくなってしまうんだよ!アンタと一緒に居たくなる。」 駿河「…(汗)。」 カルロス「だが私は護とターさんと小型船で採掘したいんだ!でも黒船と離れるのは寂しいんだ!だからバイトだけさせてくれ!それに小型船でどれだけ稼げるのか正直不安があったりする。」と言い「小型船の値段って予想以上に高くて、買うと貯金がな…。黒船でバイトしないとジャスパー側の金が無くなる。宜しくお願いします船長。」 駿河「わ、わかりました。」 カルロス、はぁと溜息ついてガックリすると駿河を指差して「昔はもっと元気だったのに」と言い「7年前、駿河が黒船に来た当初はウザイほど元気な操縦士で」 話を聞いていたジュリア、内心ウンウンと密かに頷く。 駿河「それはまぁ…若かったんですよ。」 カルロス「今も十分若い!あの元気な操縦士がティム船長と管理に締められてこんなにショボくなってしまった。」 駿河「ショボくって。…そもそも俺は別に黒船の船長になりたかった訳じゃ無いし」 上総「そうなの?!」 駿河「船長にはなりたかったよ。でもいきなり黒船は無いだろうと。せめて別の船…ブルーは満さんが居るから嫌だけど。」と言って「だって新人船長が黒船ってオカシイだろ?しかもあのティム船長の後釜って壮絶なプレッシャーなんですけど」 上総「よく引き受けたね」 駿河「…それはそのー…。せっかくティム船長に育てて頂きましたし、あの人も『駿河が船長になるなら仕方がない』とか言って黒船を降りて行ったもんで、まぁせっかくの期待を裏切らないよう、ティム船長の代わりに黒船を支えて行こうと…って俺はティム船長みたいには出来ないけど、多少ヘッポコな船長な方が皆、ラクだろうし。それで黒船の中が少し緩くなるといいなぁと」と言い「でも、もう無理だと思った事、何回もあるよ。何度も潰れそうになった。特に貴方が逃げた時とかね…。」とカルロスを見る。「でもある意味で、自分は傀儡だから傀儡らしく管理の言いなりになっとこうと腹括った。そういやアンバーが逃亡した時に剣菱さんに好き放題言われてさ…。」 カルロス「アンタは何というか、しぶとい。」 駿河「まぁね」 カルロス「そこは管理もティム船長も想定外だったろうな。」 駿河「想定外?」 カルロス「ティム船長は、駿河が船長になるから降りたんだろ。恐らくあの人、駿河が潰れて黒船を降りたら自分がまた黒船船長に返り咲くつもりだったと思うぞ」 駿河「…へ?」 カルロス「管理も、駿河はすぐ潰れるだろうと思ってティム船長を降ろす為に駿河を臨時の船長にしたのに、アンタ全然潰れない上に管理の無理難題をよく聞く傀儡船長になったので、このままにしとこうと」 駿河「…………。」唖然として「つ、つまり、誰も俺に期待してなかった…?」 カルロス「正直に言えば私も期待しておりませんでした!半年持たずに潰れるかもなと思っていたし。」 駿河「そんなー」 カルロス「ハッキリ言ってアンタは凄い。何でそんなに黒船の船長で居られるのか!」 駿河「な、なんでって。…なんでだろう。そりゃまぁ潰れそうになった事は多々多々あるけど、うーん。」と言い「えぇ…ホントに俺に誰も期待してなかったの?」 カルロス「むしろ『駿河の奴、とっとと潰れて船を降りろ』と」 駿河「それすっごいショックなんですけど。」 カルロス「だからアンタは凄いって。誰も黒船船長を続けろと言ってないのに自発的に続けている」 駿河「そーれーはー!」と言い「だって。もう…何か知らんがやりたいんだからいいだろー!」 上総「いいよ!」 駿河「俺がずっと黒船に居座ってもいいのか!」 カルロス「いいんじゃないの」と言いつつテーブルに肘を付いて手にアゴを乗せる 駿河「だが個人的には総司君が船長になったらいいと思ってるんだが!」 カルロス思わずテーブルにゴンと額をぶつけて顔を上げると「なんでだ」 上総「今、絶対痛かったよね」 駿河「だってそしたら黒船は人工種だけの船になる!俺も乗っけて欲しいけど」 カルロス「総司が船長だと管理がゴタゴタ言うぞ」 駿河「それは何とかする」 カルロス「…。アンタ、ホントに人工種が好きなんだな。」 上総「テレビで採掘船の番組見て人工種ってカッコイイと思って操縦士になったんだよね」 カルロス「まぁお好きなように!」 駿河「わかった!」
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