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第18章02
そして翌朝…。
採掘船停留所に停泊しているアンバーの甲板ハッチが開いて、Tシャツに短パン姿のマゼンタが出て来ると、んーっと伸びをして「いい天気だ!」
そこへゴツゴツ妖精がポンとジャンプして現れる。
マゼンタ「お!来たな妖精!」すると四角いのと三角の妖精もポンポンと飛んで来る。マゼンタと妖精は遊び始める。
そこへハッチから穣が顔を出して「何だ朝っぱらから妖精と戯れてんのか」
マゼンタ「おはよーございまっす!」というと「昨日、飲み会どんなだったの」
穣「楽しかったよ。最初、店に居た有翼種にちょっと突っかかられたけど。人間が何しに来た!とか」
マゼンタ「あらまぁ」
穣「んでも同じ採掘師同士だし、語るとオモロイんよ。俺と悠斗とジェッソがそいつらと採掘の話してて、船長とカルナギさんとトゥインタさんは酒談義してたのかな。あ、酒すっごい美味かった。有翼種って主にワインみたいな果実酒を飲むのな。あと花の酒があった。」
マゼンタ「花って、咲いてる花?」
穣「そう。香りが良くてなかなか美味かったぞ。」
マゼンタ「へぇ…。」
穣「操縦士連中は固まってなんか真剣な話してたな。まぁそんな感じ。」
マゼンタ「何時頃帰って来たの」
穣「11時半頃かなぁ。」と言うと「さて。そろそろ朝食開始時間だぞ」
マゼンタ「ゴハン行こう」と言って妖精を持って中に入る。
穣「妖精連れて行くんか」
マゼンタ「どうせ勝手に中に入って来るし!」
一方、黒船では
船長室のドアが開いて、駿河が出て来る。通路を歩き始めた駿河は、ふと隣の船室のドアが開いている事に気づいて中を覗くと操縦士連中が朝ごはん中。
駿河「おはよう」
総司&静流&アメジスト「おはようございまーす」
駿河「昨日、どうだった?」
総司「昨日は操縦士と機関士は鉱石弾の話で盛り上がってました。船長、あれいつか雲海で撃ちましょう!」
駿河「…あれ、撃てそうなん?」
総司「整備すれば撃てる。次のドック入りで整備を」
駿河「なるほど。考えておく」と言って部屋を去り通路を歩いて食堂へ。食堂はほぼ満席。
駿河「おはよー…席どっか空いてない?」
一同「おはようございます」
ジェッソ「遅れた者は部屋で食べるのがルールですぞ」
駿河「くぅ。…昨日どうだった?」
ジェッソ「酒が美味かった…。」と言って「イェソドは石茶より酒だ」
昴「食べ物美味かった。特にチーズ良かった」
夏樹「なんか有翼種の石屋が、人間側の石が欲しいって騒いでましたよ」
昴「うん。今日は本屋に行かないと。」
ジェッソ「鉱石図鑑だっけか。」
昴「そうそう」
カルロス「それターさんの家にあった本だな。護がよく見てるやつ」
昴「マルクト石とか、イェソド側に無い石を採ってきてほしいって。何がイェソドに無いか、鉱石図鑑みればわかるって」
カルロス「…。なんか黒船に仕事を取られそうで怖いな」
昴「え」
カルロス「私と護がこれから小型船でアッチとコッチを繋ぐ採掘をしようとしているのに。先に黒船に仕事の依頼が来るとは!」
ジェッソ「小型船が黒船と張り合うなんて100年早い」
カルロス「人工種初の個人事業主を潰そうっていうのか」
ジェッソ「黒船でバイトさせてあげるから大・丈・夫。」
カルロス「くぅ。独立の道は険しい」
ジュリア、ずっと立ったまま話を聞いている駿河に「船長、そろそろゴハン食べたら?」
駿河「話してる間に誰か食べ終わらないかなーと思ってたんだけど。」
レンブラント「食べ終わったけど席を立たないっていうね。」
オーカー「お茶はゆっくり飲まないと」と言ってお茶を飲む
駿河「なんて奴らだ。分かった。一人寂しく部屋で食べます」
レンブラント「すません!立ちます船長どぞどぞ!」
駿河、レンと交代で席について「いただきます!」とゴハンを食べ始める。
そこへリキテクスが「あのー、船長!次のドック入りの時に鉱石弾の整備しませんか」
駿河「それさっき総司君に言われた。」
リキテクス「ちなみに整備に3週間は必要と」と言った途端
駿河「え!」と思わず叫んでリキテクスを見る
リキテクス「以前アンバーが整備の人に聞いたらそう言われたと」
駿河「…まぁー…そうだろうなぁ。そう簡単には…。」
するとジェッソが「じゃあその3週間の間、カルロスさんの小型船が黒船の代わりに採掘を」
カルロス「え」
昴「大変だ」
リキテクス、カルロスに「何ならこの際、大型船を買ってしまうとか」
カルロス「借金で死にたくありません」
駿河「でも何とか鉱石弾を撃てるようにしてあげたいな…。せっかく付いてるんだし。」と言い「後で色々考えよう」
そこへトコトコと鉱石の妖精が食堂に入って来るとテーブルの端に飛び乗る。
リキテクス「おや。」
上総「妖精きた。」
妖精、ふとカルロスに気づいて「!」そしてポンポンポーンと飛んでカルロスの頭に乗ってから肩に降りる。
カルロス気にせずお茶を飲んでいたが「ん」と妖精を見て「お石様じゃないか!」と言ってお茶を置くと妖精を両手で持って「私の命の恩人だ。」と皆に見せる。
ジェッソ「え?」
上総「え。」
カルロス「黒船から逃亡した時、雲海の中で倒れていたら、この妖精が来て、私の顔にキックをブチかましながら『起きろ』と。」
ジェッソ「ほほお!」
カルロス「この方が付いて来いと言うので付いていったら、護とターさんに出会ったと。」
駿河「おおー…。」
上総「ホントに命の恩人だ」
カルロス「名前は、お石様というらしい。」
昴「誰がつけたの」
カルロス「ご本人の申告。妖精それぞれ名前があって、聞くと教えてくれる奴もいる。」と言うと「この方は荒っぽい方で、私が寝てると、おでこに頭突きをブチかましたり耳で頭をブッ叩いたりされる。」と言い、お石様に「今日はどうされたんですか?わざわざ黒船まで来られて。」
お石様「?」
カルロス「そうですか特に意味はありませんか。」
お石様、プルプルと身体を振ってカルロスの手から出るとポンとカルロスの頭に乗り、それから肩に乗ってカルロスのこめかみを耳でポコポコ叩いてから、カルロスの頬に足でキック!をブチかますと、テーブルの上に降りて喜びを表現しながらポンポンと跳ねる。
昴「…勝ち誇っているらしい。」
ジェッソ「うむ」
カルロス「…お石様。ちょっと痛かったぞ」
お石様「!」途端にカルロスの右手に耳を掴まれる。
カルロスはお石様を引き寄せると、左手でお石様をギュッと抱きしめて右手を握り、お石様の頭を軽くゲンコツで叩きながら「お返しですお石様。貴方ちょっと腕白すぎるので少しは大人しくなって下さい。」と言うとお石様の頭をなでなでしてテーブルに置く。するとお石様はまたカルロスの肩に乗って、まるで『大好きだー』というようにカルロスの頬や首に、耳や身体をスリスリとすり寄せる。
カルロス「…。」ちょっと迷惑げな顔。
昴「懐かれてるー。」
お石様、再びテーブルの上に乗ると、また勝ち誇ったようにポンポンと喜びのジャンプをしてポンポンポーンと跳ねて食堂から出て行く。
カルロス「…前に、管理にとっ捕まって事情聴取された時にさ、妖精に助けられたと言ったら『ふざけんな』と怒られた。」
駿河「でしょうねぇ。」
カルロス「マジでアレが命の恩人なんだよ。」
ジェッソ「…管理には理解不能ですな。」
昴「ウン。難しい。」
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