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序章 『外に出たい。』
人工種管理官「外地は危険な所だと何度も言っているのに、なぜ出たんだ!」
『それでも俺は出てみたかった。…狭い世界に閉じ込められる位なら』
無味乾燥な白い壁の四畳半の部屋に、小さなテーブルと簡素な折り畳み椅子が二脚。壁際の一脚には穣が座っていて、その穣を取り囲むように人工種管理官の制服を着た三人の男が立っている。
穣「…俺達人工種は、イェソド鉱石を採る為に人間に作られた存在です。例え外地が危険であろうと大量の鉱石がそこにあるなら採りに行くのが」
管理官「外地に出なくても鉱石は採れるだろう?」
穣「でも年々、内地で採れる鉱石は減っていて」
管理官「でも今はまだ内地で採れる。無理をしちゃいけない。」
すると別の管理官が「我々は君達の事が心配なんだ。人工種は人間が作ったものだから、人間がきちんと管理し守ってあげねば。」
穣(…また。)と辟易しつつ、(その余計な節介がウゼェってんだよ。)
更に別の管理官も「人工種管理官は、その為に存在する。」
穣、内心イライラしつつも落ち着いた声で「…人間の皆様の為に、俺は、多少無理をしてでも鉱石を採って貢献しようと」
管理官「それで船長に無理を言ったのか。…君のワガママを許可してくれたアンバーの剣菱船長に感謝するんだぞ」
穣(…そりゃテメェらにしてみりゃワガママだろうがよ!何も知らんと偉そうに…。)と、激怒で密かに拳を握りしめる。
そこへ管理官の一人が深い溜息をつくと「あんまり無茶な事をすると、君が『廃棄処分』にされてしまう。」
穣「!」思わず目を見開く
管理官、そんな穣に顔を近づけると、諭すように「君はとても優秀な人工種だから大切にしたいんだ。」
別の管理官も「君の処分が軽くなるように、上と掛け合って努力してみる。」
穣「…はぁ。」と気の無い返事をしつつ、(…そのイイヒト面が…。こいつら人に恩を着せるのホント上手いよな。お蔭でこっちは罪悪感に縛られる…。もし本気で大事にすんなら俺の自由意思を尊重してくれ。処分って何だよ、どうなるんだよ俺!)と心の中で叫ぶ。
穣「…俺は単にちょっぴり外地に出てみたかっただけです。それはそんなに重大な事でしょうか。」
管理官「人工種は外地に出てはならないと決まっている。重大な規則違反だ。」
穣「…。」黙って管理の男を見ながら(…ってか人工種を外地に出したくねぇんだろ。この石頭野郎め。畜生…。)
『自由になりてぇ…!』
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