夏のはじまり 1-1

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夏のはじまり 1-1

 しまった……!  だいじなことを忘れていた……夏のはじまりのある日。  今日は学校の職場体験実習の日だった、とうぜん風立(かぜたち)第一中学の制服にエプロン姿で市立図書館でも実習をするわけで……。  わたしは朝九時の開館にちょっと遅れて図書館にやってきたのだけど、もう職場体験実習の生徒たちがミーティングを終えて書棚へと散らばっていくところだった。 「ああ、遅刻したそこのきみ、こっちこっち」  と司書の方がわたしを呼ぶ。 「ちがうんです!」  わたしは必死で否定した。その場で回れ右をして帰ったほうがよかったのかもしれない。  でも、わたしの居場所はいま図書館しかないんだ。  そして……。 「磯崎(いそざき)さんじゃないか、どうしたの? 四日も休んでたから心配してたんだよ」  三輪(みわ)青司(せいじ)くんに見つかってしまった。  最悪だ。
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