思い出はすべて…… 6-1

1/1
前へ
/23ページ
次へ

思い出はすべて…… 6-1

 パソコンをつけて、自分でもわからないうちに「いのちの電話」のサイトを見ていた。  そこへ電話してみたけれど、つながらなかった。そこでわたしはハッと気づいた。  三輪くんなら話を聞いてくれるかもしれない!  すぐに携帯からわたしは三輪くんに電話をかけた。 「磯崎さん、どうしたの? ぼくなら今ひまだし、大丈夫だよ」  わたしはさっきの母との会話や、いのちの電話のことを泣きじゃくりながら三輪くんに話した。 「『同調圧力(どうちょうあつりょく)』ってやつだよね。ぼくもそういうみんなと一緒じゃないとっていうのは嫌いだな。それに、こういうとなんだか傲慢(ごうまん)に聞こえるかもしれないけど、磯崎さんのほうがとっても人間らしいよ。テレビに振り回されているだけじゃないか、みんな。大人もだよ」 「すごいな、三輪くん、そんな濃い話、いままで生きてきてしたことなかった」 「すごくはないんだけど、ぼくの父親は大手の学習塾講師だから、小さいころから本ばっかりだったんだ。今じゃ、あんまり本ばかり読むな、って叱られているよ。おかしいでしょ。『文弱(ぶんじゃく)()』に落ちぶれおって、って」 「それはどういう意味?」 「本ばっかり読んで身体も心も弱いって感じ」 「読書ってすばらしいのに!」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加