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思い出はすべて…… 6-1
パソコンをつけて、自分でもわからないうちに「いのちの電話」のサイトを見ていた。
そこへ電話してみたけれど、つながらなかった。そこでわたしはハッと気づいた。
三輪くんなら話を聞いてくれるかもしれない!
すぐに携帯からわたしは三輪くんに電話をかけた。
「磯崎さん、どうしたの? ぼくなら今ひまだし、大丈夫だよ」
わたしはさっきの母との会話や、いのちの電話のことを泣きじゃくりながら三輪くんに話した。
「『同調圧力』ってやつだよね。ぼくもそういうみんなと一緒じゃないとっていうのは嫌いだな。それに、こういうとなんだか傲慢に聞こえるかもしれないけど、磯崎さんのほうがとっても人間らしいよ。テレビに振り回されているだけじゃないか、みんな。大人もだよ」
「すごいな、三輪くん、そんな濃い話、いままで生きてきてしたことなかった」
「すごくはないんだけど、ぼくの父親は大手の学習塾講師だから、小さいころから本ばっかりだったんだ。今じゃ、あんまり本ばかり読むな、って叱られているよ。おかしいでしょ。『文弱の徒』に落ちぶれおって、って」
「それはどういう意味?」
「本ばっかり読んで身体も心も弱いって感じ」
「読書ってすばらしいのに!」
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