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思い出はすべて…… 6-2
わたしは自分が本などろくに読んだこともないのに、三輪くんに投げつけられた言葉に憤りをおぼえていた。
「でも、磯崎さんが羨ましいな」
「どうして?」
「そんなにイヤな学校から逃げ出したじゃない。ぼくにはできない」
「もしかして、三輪くんも学校きらい?」
「好きかきらいかでいえばきらいだな。それにね、ぼくの父が言ったことがけっこう刺さったから」
「なんて言ったの? 三輪くんのお父さん」
「中学は思い出があとあとまで残る場所じゃない、そういうのはすべて高校に詰まっている、って」
わたしは思わずうなった。三輪くんのお父さんあっての言葉なんだろうけど、一つ一つの言葉の重みがちがう。
「それはそうと」
と三輪くんは話題をかえた。
「あしたも図書館には行くの?」
わからない、とわたしは言った。
「今、お父さんの帰宅待ち。たぶんだけど、家族会議が待っていると思う」
「ぼくが弁護に行きたいところだけど……がんばってね。話がまとまって、磯崎さんが赦されるのを祈っておく」
「うん、ありがとう、もしなにかあったらまた電話していいかな?」
「もちろん、じゃ、おやすみ」と三輪くんは電話を切った。
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