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心のなかの白地図 8-1
「磯崎さんの心のなかには、白地図があるのかもしれないね」
と一学期最後の日、なんとか登校したわたしは三輪くんに言われた。
「どういうこと?」
「磯崎さんはいままで本に触れたことがあまりないだけで、本当はものすごく読書や音楽や映画とか、とにかく文化的なもの全般に受け入れる下地ができているんだなって」
「そうなのかしら?」
「だと思う。不登校や引きこもりにはある種の哲学があると思うんだけど、磯崎さんはそのいいケースじゃないかな。だから、学校に反発や違和を感じて、気分が悪くなってしまう。放っておいたら、本当にメンタルの病気になってしまっていたかもしれない」
「わたしはそんなすごいことなんか考えていないの、ただ、もうわたしには合わない場所なんだって、学校が……」
「今日だってよく来たじゃない、ぼくは今日も来ないと思ってた」
「でもこれが最後になりそう、それに、わたしは三輪くんに開発されたようなものだもの。本や音楽の世界を」
「ぼくだってちょっと信じられない。いくら面白い本を面白そうに紹介しても、ついて来られる人はそういない。
磯崎さんはついて来られた。なんだか変な言い方だけど、それはやっぱりもともとの下地があったんだよ」
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