夏のはじまり 1-2

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夏のはじまり 1-2

 よりによって、三輪くんに不登校がばれてしまうとは。  わたしはまず、司書の方の誤解をとかなければならなかった。  三輪くんも言っているように、四日前からわたしは登校していない。夏がはじまってしまったから。  去年はなんとか命がけで登校していた。  だけど、たまたまネットを見ていて、鎌倉市図書館のツイッターの言葉を読んで決意したんだ。  もう登校しない、と。  図書館があるから。  唯一の悩みが三輪くんと図書委員の活動ができないことぐらいだった。 「ああ、きみだったか、ごめんごめん。ゆっくりしていって、今日もよろしくね」  とりあえずは司書の方からそれなりに覚えられているようだった。  そうかもしれない。朝の開館から六時ごろまで図書館に、セーラー服姿でいるのはわたししかいないのだから。 「なんだか訳ありって感じだね、磯崎さん。べつに学校には言わないから、あとででかまわないから、メールでも電話でもいいからなにか欲しいな。図書委員で使ってるスカイプでもいいし」  そういう三輪くんに、うん、と答えるので精一杯だった。
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