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似ている/似合ってる 10-2
そう言って、ふたりで図書館内に入った。
三輪くんは新着図書の棚を眺めている、前に来てから数日で、棚の内容はほとんど変わらないのに。
わたしはまたも三輪くんお勧めの本を借りた。彼のほうはなにやら難しそうな本を借りていた。
「お昼前に、中央公園に散策に行かない?」
とわたしは提案した。
この日はそれほど日差しが強くなかったし。
「いいね、公園のなかにも近くにも喫茶店があるから暑くなったらそこへ避難できるし」
わたしはどきどきしていた。
「あの、三輪くんにききたいことがあるんだけど……」
「なに?」
「プラトンの『饗宴』をどうして勧めてくれたの?」
「それは、やっぱり哲学のスタート地点に立つ本だから、それに読んでおもし──」
「それだけ?」とわたしはつい話を遮ってしまった。
「知を愛するとか、好きな子に知への誘導をするとか、まるで──」
やばい、顔が真っ赤になってきた。
というより、三輪くんも顔が真っ赤になっている。こんな三輪くんははじめてだ。
「ま、まるで、なに?」
ポプラの並木の遊歩道で、ふたりして頬を赤く染めて、いつのまにか歩く早さもゆっくりになっちゃって……。
歩くのをやめて、わたしは三輪くん、いや、青司くんを見つめている。
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