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似ている/似合ってる 10-3
どう言えばいいんだろう。
もう青司くんも気づいているよね、これは。
「その、三輪くんと……わたしみたいだなって思ったんだけど、プラトンの本」
言っちゃったよ!
たぶん青司くんも必死になっているにちがいない。
「あそこの木陰にベンチがあるからすわらない?」
ふたりで並んですわる。
距離がほんの少しあるのが気になる。
磯崎さん、と青司くんは彼らしく、わたしの目を見つめながら言った。
「本当のことを言うと、ぼくも似たようなことを考えていた。読書をする友達は学校でもネットでもたくさんいるけれど、本の世界の面白さをナビゲートしてあげて、たぶん人類にとって最高の楽しみ、知と戯れる、ってことを伝えられるのは、磯崎さんだけだったし」
「それだけじゃ、ないよね?」
やや時間をおいて、青司くんは口を開いた。
「うん、ちがう、それだけじゃない」
「どうちがうのか、きいてもいい?」
「磯崎さんわかった上で言ってるよね」
うん、そうなんだ、強引かな、とわたしは思った。
だけど。
「磯崎さんは中学の残りをフリースクールに通うとして、高校はもう決めてあるの?」
「まだ──。三輪くんは決まってるの」
「ぼくならもう決まっている」
そう言って出てきた高校の名前はそれなりに名門として知られている高校だった。
「わたし、今決まった、進学先」
「え……どこ……?」
わたしは青司くんにほんのわずか身体を寄せながら言い切った。
「三輪……いや、青司くんと同じ高校にする」
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