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インターネットの匿名掲示板では、こんな噂がまことしやかに拡まっていた。
『アナザーゲートはあの世への入り口!? アナザーゲートに纏わる都市伝説の全容』
内容はこうだ。いつも通りアナザーゲートにログインしようとすると、タイトル画面が無音かつ真っ白になり、中心に扉と思われる黒いゲートが現れる。そこから聞こえる案内音声に「はい」と答えると、アナザー、つまりあの世に連れて行かれるという。実際にOLが一人、アナザーに連れて行かれたという――
「ホントにあるのかねぇ。どうせならあの世じゃなくて、ゲーム世界に連れてってほしいね」
スレッドを読み流し、俺は頬杖をついた。
社会に馴染めず自宅警備生活を送る俺にとって、アナザーゲートは最早生活の一部だ。現実に居場所がない俺の、唯一の楽園。さぁ、今日も現実逃避の楽園に向かおうではないか。
そう意気込んでログインしようとしたところ、何やら画面がおかしい。真っ白のまま動かないのだ。もしや、バグか? パソコンがイカれた?
そう考えた時、中心にポッカリと長方形の黒い穴が現れた。そこから聞こえる、無機質な声。
『《ネモ》さん、貴方はアナザーゲートの世界への招待権を手にしました。今すぐアナザーへと向かいますか?』
俺は生唾をごくり、と飲み込んだ。《ネモ》とは俺がアナザーゲートで使用しているハンドルネームだ。都市伝説は本当だったのだ!
さて、どうしたものか。確か、アナザーゲートの都市伝説では、この扉は現実に不満や生き辛さを感じている人間の前に現れるという。
となれば、考えるまでもない。現実に未練はない。アナザーの世界へ行けるのであれば、まぁ悪くないな。
『では、これよりアナザーへのゲートを開きます』
あれ、でもこれって、確か死ぬんじゃなかったっけ? やっぱり待って、一旦保留に――
ハンドルネーム《ネモ》の嘆願も虚しく、彼は光に包まれ消えた。
翌朝、彼の自宅マンションの前で一人の男性の墜落遺体が発見されることとなる。
〜了〜
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