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固まっている僕を見て、和弘は「どうした?、来いよ」といつもの調子で僕に話しかけてきた。
恐る恐るベンチに近づき、和弘の隣に座った。あの頃と少しも変わらない笑顔だった。
「久しぶりだな、元気だったか?」
「うん、まあまあだな。和弘は・・・」
元気だったかと聞くのもおかしい気がして、その後の言葉が出なかった。
話したい事、聞きたい事、沢山あるはずなのに言葉が出ない。そんな僕を知ってか、和弘から話を始めてきた。
「どうして、駅で降りなかったんだ。家に帰りたくないのか?可愛い奥さんも、お前の帰りを待っているんだろう」
なんで、僕がいつもの駅で降りなかったのを知っているのだろう。疑問に思うのと同時に、今の和弘なら知っていて当たり前の気もする。
そして、和弘になら、素直に自分の気持ちを言える。認めたくない自分の気持ちを言える気がする。
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