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「あーあぁ……」
女神は急須のハーブティーを淹れ直し、先ほどまで少年がいた対面を物憂げに見つめる。空になった湯呑は彼女が指を向けると、ちゃぶ台に沈むようにして消えていった。物理法則を完全に無視した現象。しかし彼女は女神である。これくらいの奇妙な現象など朝飯前だ。
「そりゃ一死七生したとしても、この世界で生まれる以上は場所はただ一つだけでしょうに。意識だけ確かなまま胎児になったらどうなるかなんて、少し考えればわかるものだと思うんですがね……。もしかしてコウノトリに運ばれたり竹の中に収納されたりすると思ったんでしょうかねえ」
彼女は心配するようにも、呆れているようにも見えた。
「どんな世界にせよ、転生なんて上手くいくわけがないのに。どうしてこう――都合の良いようにしか考えられないんでしょうか」
女神は立ち上がり、障子の窓を開ける。
その向こうはただただ白に塗り潰された空間が広がっていた。そこには無数の帯が漂い、一本一本に全く様相が異なる世界が映し出されている。女神から見れば、どれもこれも酷く悲しい世界ばかりだ。
二度と死んでも、いきたくないものだ。
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