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「候補はいくつかあります。まずご紹介するのは王道のファンタジー世界です。あなたの世界では中世ヨーロッパに近いイメージでしょうか。ゲームの世界観でも似通ったものがあるとかないとか」
頭の中に響く女神の声。
「でも、あくまで異世界だろ?」
「ええ。そこでは魔物と人間が生存をかけて戦っています」
俺は若い冒険者に生まれ変わっていた。つい先ほど魔物が住む洞窟から出てきたところだ。
どうやら激しい戦闘の後だったようで、身体中に切り傷や打撲と思われる痛みがある。仲間は見当たらない。もともといなかったか、あの洞窟の闇に吞まれたか。手持ちの塗り薬を使ったが、傷があっという間に回復するのはやはりゲームの中の都合のようだ。
身に着けている鎧や剣はどうしようもないほど重く、このような状態では走るどころか一キロを歩き回ることすら難しく感じる。目的地までは車で移動しないと……あるわけがないか。これによるストレスは相当なものだ。
見たこともないほど太く高い木が並ぶ森の中を一人で進む。これも体験する際のサービスだろうか、街に戻る道は頭に入っていた。整備されていない道が続き、時には獣道を苦労して進まなければいけなかった。
「……文明はあまり発展していないんだな。前世の知識は結構アドバンテージになるかもな」
「ですね。ただ注意点として、その世界は現在魔物が多めとなっています。人類側はほぼ絶滅状態となっていますね」
「マジか」
「大マジです。ですから、知識を持ち込んだくらいでどうにかなるとは思えません」
それはダメだろう。生まれ変わった瞬間から詰んでいては、転生の意味がない。
「他のはあるか?」
「そうですね……それでは次の世界に行ってみましょうか」
再び意識が遠のいた。
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